在宅医療とは?
最近介護や高齢者医療という言葉などとともに、マスコミなどで在宅医療という言葉を聞かれた方は多いのではないでしょうか?この数年で在宅医療という言葉はかなり一般的になってきました。しかし皆さん在宅医療という言葉は知っていても、実際にどのような医療なのかなかなか理解しづらいといわれます。そこでここでは在宅医療についてまとめます。
はじめに.在宅医療とはどんな医療でしょうか?
在宅医療は広義には、病院外で行う医療全般を在宅医療と呼びます。たとえば病院で処方してもらった薬を自宅で飲んだり、注射薬を使用しつつ職場に通ったりするなど、通常社会生活を行いながら、自宅で行う医療、継続する医療はすべて在宅医療といえます。(ある意味入院医療以外はすべて在宅医療といえます。)
また狭義の在宅医療とは、通院困難な患者さんが過ごす自宅もしくは施設などに、医療者が訪問して、医療継続することを在宅医療と呼びます。
つまり広義はセルフケア的在宅医療であり、一方で狭義の在宅医療は自宅療養生活を医療者がサポートする形、どちらも基本は【セルフケアを大事にした医療】と理解することもできます。
ここでは、狭義の在宅医療つまり医療者が訪問する形の在宅医療について述べます。
1.在宅医療はどんな人が受けることができるのでしょうか?
通院困難な患者さんであればお若い方からお年寄りまで、病気の種類や障害の種類に関係なく受けることができます。実際に小児麻痺や先天性疾患の小児の方から、うつ病や統合失調症などで外出困難な方、さらには様々な神経難病の方や癌の方、超高齢の寝たきりの方まで実に様々な方に在宅医療は提供されています。自宅で過ごしている方がほとんどですが、中には施設に居住されていて、その施設に医療者が訪問しているという方もいらっしゃいます。
2.在宅医療はどんな人たちが来てくれるのでしょうか?
その方の必要に応じて、医師や看護師、歯科医師、薬剤師、理学療法士、作業療法士、栄養士などの訪問が提供できます。これらは組み合わせても、単独でもそれぞれの方の状況に応じて必要な医療者が必要なだけ訪問するのが原則になります。つまり在宅医療は【オーダーメイド医療】という側面もあります。しかし場所によっては、訪問する医療者がいなかったり限られたりしていることもあるので、ご注意ください。
3.在宅医療は健康保険が使えますか?
原則医療保険や介護保険などいろいろな保険でご利用になれます。医療保険では、お持ちの保険種別により、費用負担が異なります。また高額医療費の助成を利用することもできます。
以下は概ねですが、医療保険における医療費(医師の訪問費用のみ)を強化型在宅療養支援診療所の場合としてまとめると
月4回訪問の場合…8,382点
が診療費となりますので、
3割負担…20,150円(月2回)/25,150円(月4回)
となります。
一方で医療費は、所得に応じた自己負担限度額が設けられており、申請により以下のような限度額の適用を受けることができます。また、各種医療券や受給者証により医療費が無償になる方もいます、お手持ちの保険証類をご確認ください。
負担割合3割の方(現役並み)
- 課税所得690万円以上/ 252,600円+(10割分の医療費-842,000円)×1%
- 課税所得380万円以上/ 167,400円+(10割分の医療費-558,000円)×1%
- 課税所得145万円以上/ 80,100円+(10割分の医療費-267,000円)×1%
負担割合1割の方(一般・非課税)
- 一般(課税所得145万円未満)/ 18,000円(年間上限144,000円)
- 住民税非課税(区分II) / 8,000円
- 住民税非課税(区分I) / 8,000円
※入院や多数回および入院による限度額については省略しています。
※参考「東京都後期高齢者医療広域連合」 URL http://www.tokyo-ikiiki.net/
4.自宅継続できる在宅療法にはどのようなものがありますか?
(在宅療法とは自宅でセルフケアで継続可能な医療のことです。)
在宅療法として自宅での継続が認められている治療には実に様々な療法があります。
- 呼吸補助療法…在宅酸素療法・在宅人工呼吸療法、在宅陽圧呼吸療法
- 栄養補助療法…在宅中心静脈栄養療法、成分栄養経管栄養法など
- 排泄補助療法…在宅自己導尿療法や持続導尿や人工肛門などの処置
- 在宅注射療法…インスリンやモルヒネなどの麻薬など
- 補助腎臓療法…在宅腹膜潅療法や在宅人工透析
まで実に様々な在宅療法がすでに保険で用意されています。そして下表のごとく急激に利用者の方が増加しているのです。

5.在宅医療でできる治療にはどんなものがありますか?
上記の療法などはもともとセルフ医療で行える在宅医療ですが、医療者が訪問して行う医療には特段制限はありません。したがって常時継続する在宅療法と医療者の訪問時に提供される医療を組み合わせると、自宅でも病院とほぼ同様の治療を受けることができるといえます。たとえば輸血や抗生剤治療などを定期的に受けながら自宅療養している方もいらっしゃいます。ただし自宅での医療内容については、各医療機関によって異なりますので、詳しくは医療機関ごとにご相談ください。
6.どのようにすれば在宅医療を受けることができますか?
まずは各々の医療機関にご相談ください。その際に、これまでおかかりの医療機関からの紹介状や検査データ、今現在行っている在宅療法の状況や、今後の療養希望などを整理しておくと、相談がスムーズだと思います。もしどの医療機関が在宅医療を行っているのかわからないようなら、http://www.wam.go.jp/iryo/などのサイトでの医療機関検索や近隣の保健センターや医師会などに直接打診してみることもいいでしょう。
7.往診と訪問診療の違いを教えてください。
医師の訪問については、訪問診療と往診があります。訪問診療が予定訪問、往診は予定外訪問と考えていただければ結構です。つまり「それではこれからお困りのことが内容に毎週火曜日に伺うようにしましょう。」ということで伺う火曜日訪問は訪問診療。その間にもし木曜日に発熱があることで予定外に訪問してもらったら、木曜日は往診ということになります。同じ医師の訪問でも、訪問診療に力を入れている医療機関もあれば、往診を含めて緊急時の対応に力を入れているところもあるので、訪問はしてもらえるのかと同様往診はどれぐらいしてもらえるのかをあらかじめ確かめておくとよいでしょう。
8.在宅医療機関を選ぶ目安などを教えてください。
各々の医療機関ごとに訪問範囲や提供する医療内容や医療者の陣容なども異なります。一言で在宅医療機関といっても、24時間対応を重視しているところや、地域の介護サービスとの連携を重視しているところ、リハビリやターミナルケアを重視しているところなど実に様々です。そこで、どの医療機関で在宅医療を受けようかと迷われるときにチェックすべきことをまとめると、
- 自分が望む医療サービスが何かをできるだけ明確にして、そのサービスがある医療機関を選ぶこと。
- つまり診療なのか、看護なのか、リハビリなのか、いったい自分が利用したいサービスはなんなのかをなるべくはっきりさせて、それらのサービスを提供する医療機関を選ぶこと。これらは必ずしも一医療機関からすべてのサービス提供を受ける必要はありませんが、同一医療機関からのサービスは連携性・総合性・包括性に優れていて、別個のサービス主体が組み合わさる場合は、専門性が優れるという利点があると私は考えます。
- さらに望む対応を明確にすること
- ターミナルや重症の在宅など重症度が高い方であれば24時間365日対応を重視した医療機関が良いでしょうし、リハビリが必要そうな方であればリハビリ対応を中心としたところ、あるいは普段から身近な介護の相談に乗ってくれる医療がほしいのかなど希望の在宅医療内容を明確にすると良いでしょう。
いずれにしても、一度決めた在宅医療機関を断って、他の在宅医療機関に変えるのは大変という声をよく聞きます。将来のことも考え、くれぐれも慎重に選んでいただくことをお勧めします。
(2019.4.19更新)