がん遺伝子検査│特定非営利活動法人 標準医療情報センター

遺伝子検査とは

「遺伝子」や「DNA」という言葉はネットや新聞、雑誌、テレビ番組で氾濫しています。
「がんになりやすい家系」とか「高血圧になりやすい家系」、中には「数学に向いている遺伝子」など繚乱の感がします。
これらの遺伝子検査は両親から受け継いだ遺伝子を知る検査で「SNPs」検査と呼ばれています。通信販売で申込むことのできる数万円でできる「遺伝子検査」です。 「プレシジョン」「ゲノム解析」「リキッドバイオプシー」などとは異なるもので検査の目的が異なります。

違いを知るために、遺伝子に関した言葉を復習しましょう。
「DNA」は遺伝情報を保存・伝達し身体を作る為の指示や調整を担う高分子生体物質です。デオキシリボ核酸と呼ばれています。この「DNA」の中に身体の設計図となる情報を持つ部分があり、これを「遺伝子」と言います。遺伝子の部分は「DNA」全体の2%もありません。残りは遺伝子の働きを調節したりして身体を作ります。
また、この「DNA」が「ヒストン」と呼ばれるタンパク質に巻きついた形のことを「染色体」と言います。DNAが染色体の構造をとることで細胞分裂の際に遺伝子情報が正しく伝達されます。

多くの病気の発症には、両親から受け継いだ「遺伝要因」と生活習慣・生活環境などの「環境要因」とが関係します。
「単一遺伝子疾患」と呼ばれる遺伝要因だけで発症する病気も存在し、父親・母親の両方から受け継いだ2種類の同じ遺伝子の相互作用で、病気になるかどうかが決まるという特徴があります。家族性大腸腺腫症や筋ジストロフィーなどが挙げられます。
これらの一部は出生時に行われる必須検査で全員検査されます。

一方、生活習慣病をはじめとする多くの疾患は、遺伝要因と環境要因の両方が寄与する「多因子疾患」です。多因子疾患では複数の遺伝子が少しずつ発症に関与するもので、個々人によって保有する発症関連遺伝子の組み合わせが異なります。
「多因子疾患」としては、糖尿病やがんでこれらは複数の遺伝子に偶然起こった変異の蓄積が、最終的に病気の発症へとつながるのです。
このような遺伝子的な個性や体質検査は病院で行う遺伝子検査とは異なるので混同しないようにしましょう。
この遺伝子検査でわかるのは、病気を直接引き起こす「原因遺伝子」ではなく、病気のリスクを高める「感受性遺伝子」であり、ある病気になりやすいという診断が出たからといってその病気になるとは限らないのです。
また、遺伝要因と環境要因の割合も病気の種類や個人差によって異なるため、遺伝子検査のみでは測れません。多くの病気は遺伝的要因と環境的要因の両方が寄与しているからです。

がん罹患の時に病院で行われている主ながん検査

がんと診断された方を対象に治療効果を見るための検査の主なものです。病院の医師の診断によって行われる検査で主治医と相談し検査できます。
「コンパニオン診断」という検査があり、患者自身の遺伝子と分子標的薬(化学療法)の適用を検査するもので治療効果と副作用を推定し治療計画を立てることができます。

血液によるがん検査比較

腫瘍マーカー
腫瘍マーカーは、がんの存在によって血液中に増加する生体因子で、がん再発の有無に多く利用されています。
がんが進行した状態(大きい)でないと主要マーカーの検出が難しいこと、またその腫瘍マーカーが正常組織から産生されたりすることもあり、PSA(前立腺がん)を除き、腫瘍マーカー単独でのがんの確実な早期発見は難しいという欠点があります。
アミノインデックス
アミノインデックスは、血液中のアミノ酸濃度のバランスから、現在の健康状態や生活習慣病はじめがんの可能性を明らかにする検査です。
血液中のアミノ酸濃度のバランスから、現在の健康状態や病気の可能性を明らかにする検査で、がん領域では胃、肺、大腸、膵臓、前立腺(男性)、乳腺(女性)、子宮・卵巣(女性)のリスク検査を行っています。
検査結果は「ランクA」「ランクB」「ランクC」とそのリスクの大きさに分類され、一番リスクが高いランクCの人でがんがある確率が約100人に1人というレベルです。
CTC検査(血中循環腫瘍細胞)
がんが直径1〜2cm位の大きさになると、血中に循環腫瘍細胞(CTC)を放出、この細胞を検出する検査です。
現在の測定技術では正確な検知は難しく、まだ基礎研究レベルです。
エクソソーム中のマイクロRNA測定
エクソソーム中のマイクロRNA測定は、胃がん、大腸がん、食道がん、すい臓がん、肝がん、胆道がん、肺がん、乳がん、卵巣がん、前立腺がん、膀胱がん、神経膠腫、肉腫を調べる検査です。
次世代診断システムとして期待されていますが、まだ実用化には時間がかかります。
血中DNAのメチル化解析
がん抑制遺伝子にメチル化が起こるとがん抑制遺伝子が機能しなくなるため、がん化しやすくなることを根拠とした、がん抑制遺伝子のメチル化状態を解析する検査です。
血液中にメチル化されたDNAがどの程度遊離しているのかまだわかっていません。
また、メチル化は、遺伝子発現と組み合わせなければ評価するのが困難です。
血中のcfDNA濃度測定
体内にがんがあるとcfDNAが増える傾向があることを根拠にした、血中のcfDNAの量を調べる検査です。
血中には正常細胞由来、がん細胞由来のcfDNAが存在しているため、単純にcfDNAの量を測定しただけではがんの特定はできません。
がん以外の炎症反応によって発現量が増えるため、根拠に乏しい検査です。

早期発見・治療効果確認のための検査

免疫機能検査/FCM検査
この検査は、静脈採血により末梢血単核細胞(PBMC)を分離し、生きた状態の細胞を検体とします。抗体染色(フローサイトメトリー法)により細胞の数・比率・濃度・機能・状態を測定・解析し、健常人とがん患者とのデータを比較して、体内の免疫状態を総合的に判定する検査です。
検査方法は試料中の細胞の数、試料中の生きている細胞の割合、細胞の特徴(大きさ、形状、表面の腫瘍マーカーの有無など)を計測します。まず蛍光色素で細胞を染色し、それを液体に混ぜて細い管の中を通過させた後に、レーザー光などの光を照射します。計測は蛍光色素の光に対する反応の強さに基づいて行われます。
ALA(5-アミノレブリン酸)検査_(尿中ポルフィリン濃度測定)
この検査はALA(5-アミノレブリン酸)を用いた新しいがんの診断法です。現在行われている健康診断や、がんマーカー等による検査で、がんを微小な段階で発見したり、前がん病変の発がんリスクを正確に評価する事は、残念ながら十分とは言えません。この微小がんを発見出来る検査がALA検査です。
ALA(5-アミノレブリン酸)とは、もともと生体内で合成される物質で、「ポルフィリン」を経て正常細胞では「ヘム」に代謝されます。しかし、がん細胞では、ALAは「ヘム」にまで代謝されず、途中の物質である「ポルフィリン」が細胞中に蓄積され、さらに過剰に蓄積した「ポルフィリン」は尿中に排出される事がわかっています。
「ポルフィリン」の蓄積は全てのがん種で起こるため、ALA(5-アミノレブリン酸)を服用し、尿中ポルフィリン量を測定すれば、がんの有無を簡単に調べる事ができるのです。これがALAを用いた『がん』診断法です。
オンコタイプDX検査
オンコタイプDX検査は、女性の乳がん細胞にある21種類の遺伝子(がん関連遺伝子16種類対照遺伝子5種類)を解析し、その発現の仕方や活性度を調べます。検査結果は再発スコア(0から100までの連続した数値)として報告されます。再発スコアは、乳がんがどのくらいの確率で再発する可能性があるかを示すと同時に、ホルモン療法に化学療法を加えることで患者さんにどれだけの効果が得られるかを示します。オンコタイプDX検査は、これまで医師が乳がんの再発を予測するうえで参考にしてきた従来の指標(がんの大きさ・がんの悪性度・リンパ節転移の有無)に加えて、患者さんにとってより適切な治療法を選択するために、さらに参考となる情報を提供します。
循環がん細胞検出検査/CTC検査
進行したがん細胞は血液やリンパ液の流れに乗って循環し、離れた臓器にまで転移をおこします。このように血液中に循環しているがん細胞が血中循環腫瘍細胞(Circulating Tumor Cell、略してCTC)です。現在では血液中のCTCは、乳がんや前立腺がん、大腸がんなどの転移性のがん症例において早期治療効果の判定や予測因子、また予後予測因子として有用性が認められ、セルサーチシステムによる乳がんおよび前立腺がん、大腸がん症例のCTC検査は、アメリカ食品医薬品局(FDA)の承認を得られています。
アミノインデックス検査
身体の血液中のアミノ酸バランスは、常にほぼ一定になるようにコントロールされています。アミノ酸は、身体の中でさまざまな新陳代謝のネットワークを作っていますが、病気になると、多くの場合、代謝のバランスが変化し、血液中のアミノ酸濃度が変動することがわかっています。これに着目し、血液中の各種アミノ酸濃度から、健康状態や疾病の可能性を明らかにする技術を活用した解析サービスです。このアミノインデックスを用いて血液中のアミノ酸濃度を測定し、健康な人とがんである人のアミノ酸濃度のバランスの違いを統計的に解析することで、がんであるリスク(可能性)を予測する検査を アミノインデックスがんリスクスクリーニング(AminoIndex Cancer Screening:AICS)といいます。
がんの人では血液中の各種アミノ酸濃度バランスが変わります。AICSは、それをもとにがんに罹患しているリスクを予測する検査で、対象となるがんの種類は、胃がん・肺がん・大腸がん・前立腺がん(男性のみ)・乳がん(女性のみ)です。

(2019.5.6公開)

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