特定非営利活動法人 標準医療情報センター

SDMのガイドライン

 患者中心の医療が求められるなか、治療方針の決定に患者と医療者がともに参加する共同意思決定(SDM)が注目されている。
 これは、医師と患者が医学情報はもとより、人生観など、一人ひとりの価値観や生き方なども共有したうえで、治療方針を話し合って決めるというものだ。
 日本でも徐々に動き始めているが、英国では目覚ましい発展を遂げつつある。その共同意思決定のためのガイドラインが最近更新されたので、紹介したい。要点は次のとおりである。
① すべての患者は治療と看護について意思決定に参加する権利を持ち、伝えられた意思決定を行えるように支援される。
② 意思決定は、患者と医療提供者の対話に基づいた継続的なプロセスで、患者に直接的に関係する情報のやりとりに基づくものである。
③ すべての患者は意見を聴いてもらう権利を有し、意思決定のために必要な情報を提供され、その情報を理解するために必要な時間と支援を与えられる権利を持つ。
④ 医師は患者が「何が重要か」を見つけるように努めなければならない。患者と医師が関係する情報、提案する選択肢や妥当な代替肢や何もしない選択肢を含め、それらの便益と被害についての情報を共有できるようにする。
⑤ 医師はすべての成人患者は治療や看護ついて意思決定できるという推定から始めなければならない。
⑥ 治療や看護の選択能力を欠く患者には、選択が全体的な利益をもたらすようにしなければならない。
⑦ 患者の同意する権利が法律に影響される場合、意思決定の過程に関与するように当然、支援されるべきだ。また選択権の行使が可能な場合は、支援されるべきである。

英国のSDMに学べ

 内閣府のNPO法人ポータルサイトにある「標準医療情報センター」に、日本におけるSDMの資料として「病気の標準治療法解説」が掲載されている。これを、意思決定支援資料として活用されることをおすすめする。
 英国ではNHS(英国国民保健制度)が主体となり、SDMの改革を積極的に推進している。英国と日本の医療保健制度の近似化は格段に進みつつあり、英国で進められているSDMの事例は、日本においても参考になるはずだ。
 日本でも、SDMを推進する機は熟している。二次医療では看護師グループや開業医が患者の支援グループとして、患者の意思決定を円滑に進める。特に看護師は、患者を24時間3交代で看護しているため、看護師グループとして患者のSDMに加わるのは極めて自然で、看護協会も支援を拡大する好機と考える。

(「CLINIC BAMBOO」2022年8月号より引用・転載)

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