そのような場合に大規模臨床研究といって多くの施設が参加して同じ病気の人を大勢集めて、ある治療法や薬(ここではA法とします)が効果があるかどうかを判定します。この場合A法だけですとその効果が分かりませんから、今までの方法や薬(B法とします)または効果がないと分かっている薬(プラシーボ)をコントロール群として 大体同じ人数集めて比較します。このようなきちんと比較した試験を行って効果があると判定できたものが信用のおける治療法だということができます。

今まで欧米では、こういったガイドラインに沿って標準的治療法が確立していました。しかし日本では標準的治療法の普及が非常に遅れていて、医師個人個人の裁量で治療法が選択されているのが現状です。理由のひとつは欧米の試験の結果をそのまま当てはめようとしても生活習慣、人種、認可された薬も量もすべて違うので日本人にうまく合わないことがあります。それならば日本人で大規模臨床試験を行えばいいのですが、日本ではこのような大規模臨床試験はほとんど行われたことがなく(これは日本の大学や学会の責任ですが)、日本独自のガイドラインが作れなかったのです。
このような現状ですが、日本でも日本独自のガイドラインを作らなければいけないということになり、厚生労働省の後押しで現在いろいろな学会がそれぞれの病気のガイドラインを作っているところです。
ここで注意していただきたいのは、
- きちんとしたエビデンスが出ているものは非常に少ないこと
- 新しい治療法はまだエビデンスが出ていないことが多いので、ガイドラインには入らないこと
- また日本人固有のデータではないものが多いこと
- 個人個人の病気や原因は違っていて、時にはその個人に合わせた固有の治療法が必要であること(オーダーメード医療)
ガイドラインでは治療法をグレードで分けています。
グレードA | ・・・行うように強く勧められる。 |
グレードB | ・・・行うように勧められる。 |
グレードC1 | ・・・行ってもいいが十分な科学的根拠がない。 |
グレードC2 | ・・・科学的根拠がないので勧められない。 |
グレードD | ・・・行わないように勧められる。 |
つまりグレードDはやってはいけないことです。そのほか記載のない治療法はたくさんありますが、記載のないものは経験的に行われていて、臨床試験が行われていないということです。この場合その治療が良いか悪いかは判断できません。