特定非営利活動法人 標準医療情報センター

1.はじめに

 MSカンパニーの設立認可本筋は非営利を厳しく規定されている社会医療法人を筆頭とする民間病院であった。
 理由として、本来業務の医療業務に隣接する薬剤や医療機器等の購買や修理・維持関連業務は一般民間業務と競合する分野であり、医療従事者には知識や経験で不利であり、トータルとして民間企業と比べ、不利であり、本来業務の効率的な医療経営にマイナスの影響を及ぼすと考えられた。
 本来業務以外の隣接する関連業務に効率性を追求可能な一般企業を関連企業として、傘下に設立する事を認めた。これがMS法人*である。
 注)厚生労働省が2014年に明文化した医療法人とMS法人との関係の透明化について、まとめる以下の通りである。

①MS法人は医療法人が行う医療サービス(診察、治療、これ等に関する相談等医療行為)以外の医薬品や医療機器など購入や管理及び、会計処理業務、更に医療に関係する不動産の管理である。

2.診療所やクリニック等の一般開業医にMS法人設立を認めているが、民間病院と比べ、その利点を享受出来ていない。その理由は以下の通り

 一開業医当たりの薬剤や医療機器の購入量は民間病院と比較し、数量が小さく、価格は割高で付帯サービスも悪くなるのは当然で、関連情報の提供も限定される。その為、専任の事務・会計処理人員を配置することが困難である。

3.今後のあるべき一般開業医のMS法人への改善や構造改革について、先行する英国のPFIモデルと比較することが、筆者は以下の理由で大変有益であると考える。

 2009年11月に英NHS:国民健康保健制度は医師の免許更新制度を導入した。この更新制度は5年ごとの更新試験が課されているが、自動車免許の更新要件と違い、医師免許の更新は、毎年達成要件を課され、年年医療技術の進歩に合わせ、医師への達成要件も1年毎に厳格に決められ、5年毎に最終審査を受ける。

 この試験要件に対応し、過疎の市町村を除き、通常3箇所・3人の診療医が非営利クリニック組織*を結成し、MS関連業務を専任のマネージャーを雇用し、医師達は診療業務に選任する。但し、3人の開業医は医師免許更新時期が異なり、5年目の更新時期の医師は診療業務を軽減され、更新試験に専念する。

 *このクリニック組織(PCT:Primary Care Trust)は診療時間は通常の診療所より運営時間は長く、週7日で、現在ではOn Line診療を含めると週7日24時間体制のところが一般的で民間企業は通常の民間企業を何ら変わらす営利を追求し、一般民間企業として商行為を非営利社会医療法人に代わり、行うことが規定されている。厚生労働省が2014年に明文化した医療法人とMS法人との関係の透明化について、まとめる以下の通りである

  • ①MS法人は医療法人が行う医療サービス(診察、治療、これ等に関する相談等医療行為)以外の医薬品や医療機器など購入や管理、医療に関係する不動産の管理
  • ②MS法人が行う取引は市場価格からみて妥当であること、これに反する場合医療法人に指導監督がなされる。
  • ③MS法人の活動、財務内容は社会医療法人(社会福祉法人含む)の財務諸表に注記される。
  •  
  • 注)上記①~③は医療法人とMS法人との関係の透明化を計る為、社会医療法人に限らず、一定規模以上の医療法人についても注記を検討すべきと今後の課題を指摘している。特に来年には10年間を経過し、歪や改善点が明確化し始めている。これらの点につき以下で論じたい。

4.今後のあるべきMS法人への改善や構造改革について、先行する英国のPFIモデルと比較することが、筆者は以下の理由で大変有益であると考える。

  • ①英国と日本の国民健康保健制度が類似しており、人口の高齢化が日本で急速に進行しており、生活保護が高齢者家庭で増大し、税金による医療費支援も拡大し、税で運用される英国と日本の国民健康保険制度は、非常に類似化が進行中している。
  • ②日英両国の医療分野でデジタル技術面の相互学習で、進化・発展が著しい。両国の健康保健制度の急激な類似化がこの具体的診療面でも進行中である。
  • ③英国の医療サービスは約95%以上が税金で運用される公的制度下で提供される。日本もほぼ同様に95%以上が公的医療保険制度下で提供され、両国の国民にとり医療サービスは財務面でほぼ同じであると云える。

5.英国の医療分野で我が国よりも進んでいる面は法制度面で理由は以下の通り

  • -①英国と米国、カナダ等北米地域と言語面での共通性と法律面で慣習法に基づいており、成文法の国々より、新しい状況にはより柔軟性を持って適応している。
  • -②一方、我が国やヨーロッパ諸国の成文法と明確な処理速度や柔軟性が劣るのは新しい状況下で柔軟性におとる為、処理速度面で慣習法下の英米国やカナダ、オーストラリア、ニュージランド等諸国に比べ、遅いことが観察される。

6.日英の一次医療(プライマリー・ケア)面の提供体制は、ほぼ同じであるが、実態面で大きな差異が生じている

詳細は次の通り

  • ①英国は一次医療の医師は5年毎に免許の更新制が導入され、内容も1年毎に講習内容が詳細に規定され、自動車の免許とは違い、変化する医療情報の知識及び医師と患者の関係性(患者が自分の治療について、医師と共同で意志決定を行う方向)に急激に変わっている。
  • ②開業医は単独診療所経営では、免許の更新に備える事に大きな負担を経験し、自衛の為、更新時期の違う開業医がグループ化し、結果的に3人が共同診療所経営に乗り出し、診療時間も土日や平日の開業時間を延長し、さらに非医療面の業務処理するマネージャーを雇用する形態が主流になっている。単独診療所は農村部や僻地に限定されている。
  • ③それに対して、日本の診療所の医師は免許の更新制が無い為、時間的にゆとりがある証左か、ゴルフにドイツ車の自家用保有の開業医が多いと推察される。更に開業医の団体、医師会の政治力が強力であると云われ、免許の更新制の話題は公式の厚生労働省の議題には上がっていない。

 結果、一次医療ではMS法人は開業医が経営関与し、規模も小さい。見るべき専門性も期待できない。

7.現状打破のMS法人の新しい形態案

詳細は次の通り

  • ①地域の開業医の皆さんが株主になりMS法人を設立、各株主はこのMS法人に対して、医療以外の医薬品や医療機器など購入や管理、医療に関係する不動産の管理業務を委託し、規模の利益を享受し、且MS法人の専門性を磨き、其のノーハウに裏付けられた品質と価格競争を持つMS法人のサービスを各株主の診療所に還元する。
  • ②MS法人の規模は地域医療圏が基幹エリアとして確立が最重要である。但し、基幹エリア外に対して、隣接する医療圏や医療圏が小さいエリアや山間地帯に対して、ITとAI技術を駆使し、拡大する事は十分検討に値する。

8.結論

IT技術やAIを活用し、一次医療におけるMS法人の質と規模の拡大は、例え、医師の免許の更新制を導入前であっても、患者サービスの改善と総合的医療のサービスの品質向上に大きな可能性が在ると結論付けます。

以上

ページトップへ