子宮がん(子宮頸がん)│特定非営利活動法人 標準医療情報センター


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子宮頸がんと子宮体がん 子宮がんは子宮の出口(頸部)に出来る子宮頸がんと奥のほう(体部)に出来る子宮体がんに分けられます。
ここでは子宮頸がんについてご説明します。


【子宮頸がんの特徴】

 子宮頸がんの組織の95%以上からヒトパピローマウイルスが検出されることにより、子宮頚癌の発生にはヒトパピローマウイルスの遷延感染が強く関係しているといわれています。このウイルスの感染を予防することが子宮頸がんの発生を防ぐことにつながると考えられ、数年前から欧米ではヒトパピローマウイルスに対するワクチンが発売され、平成22年4月より我が国でも承認されています。
ただし、このウイルスに感染した女性全員が子宮頸がんにかかるわけではなく、感染した人々の中で、ごくわずかの人に癌ができるといわれています。ウイルスに感染した後、癌ができるメカニズムには喫煙、ピルの服用などの影響があると言われていますが、いまだ原因不明で、今後の研究の成果を待たなければなりません。

 他の卵巣がん、乳がんなどは40代から、50代、60代の女性に多く発生しますが、子宮頸がんだけは20-30才台の女性の発生率が高く、若年化が心配されています。若年化の理由として、発がんの原因とされる、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染の若年者における蔓延が挙げられています。また癌検診により、初期で発見されれば、円錐切除という方法で病巣だけを切除、子宮を残し、子供さんを産むことも可能ですので、がん検診が強く勧められています。
以上より、国で定められている検診では他の癌では40歳からの検診が勧められているのと異なり、子宮頸がんだけは20歳からの検診が勧められています。

【子宮頸がんの症状】

 子宮頸がんの症状は他の癌と同じ様に初期では無症状ですが、少し癌が大きくなると出血、特に接触出血と言って、性交渉を持った後に見られる少量の出血が見られます。あるいは普段と異なる茶褐色のおりものを見ることも特徴的です。

【子宮頸がんの治療】

 子宮頸がんが見つかった場合には、治療(がん組織を摘出、あるいはやっつける)を行いますが、CT検査、MRI等の検査を総合的に行った後、病気の広がり(進行期)を決定、一番適する治療を一つ、あるいは組み合わせて行います。

進行期別の標準的な治療法

子宮頸がんI期
0期(上皮内がん:癌細胞が子宮の上皮の中に留まり、浸潤していないもの)
子宮頚部円錐切除術
単純子宮全摘術(閉経後の方や妊娠を希望しない方に行います)
腔内照射(高齢・合併症のある方などで手術が困難な方に行います)
Ia期(少し広がっているが、深さで5mm以内、
横に7mm以内の広がり)
単純子宮全摘術(+両側附属器摘出術;閉経後の方)
円錐切除術:妊娠を希望される方
準広汎あるいは広汎子宮全摘術
腔内照射
Ib期(Ia期より広がっているが、腫瘍組織が子宮頸部に
留まっているもの)
広汎子宮全摘術(+術後放射線)
放射線療法(外照射+腔内照射)
化学放射線同時療法

子宮頸がんII期
II期(頸部の外へ広がっているが、骨盤壁、あるいは
膣壁の下1/3に達していないもの)
広汎子宮全摘術(+術後放射線)
放射線療法(外照射+腔内照射)
化学放射線同時療法

子宮頸がんIII期
III期(癌が骨盤壁までに達しているもの、
あるいは膣壁の下1/3を超えているもの)
放射線療法(外照射+腔内照射)
化学放射線同時療法

子宮頸がんIV期
IV期(がんが骨盤を超えているか、膀胱、直腸の
粘膜にも広がっているもの)
放射線治療(出血や痛みのコントロールなど症状の緩和を
目的に行います)
化学療法

実際の治療方法

 患者さまの癌の進行期、年齢、全身状態などを判断して、患者さまのご希望にそった最も良い治療法が選ばれます。ひとつだけの治療法ではなく、個々の患者さまによっていくつかの方法を組み合わせて治療を行います。

日本 欧米
I・II期では手術療法、III・IV期では放射線療法 放射線療法が中心
円錐切除術
手術療法
● 円錐切除術
レーザーを用いて、子宮頚部を円錐型に切り取る手術です。1泊2日の入院、腰椎麻酔で手術が可能です。手術翌日に退院が可能です。また、子宮を残すことが可能なので、妊娠を希望される方にも行えます。
癌をすべて取りきるための治療であることはもちろん、癌がどれくらいすすんでいるかを調べるための診断に用いることもあります。

子宮全摘術
● 単純子宮全摘術
子宮のみ(周囲の靱帯やリンパ節などの組織を大きくとらずに)を摘出します。お腹を切って行う方法(腹式単純子宮全摘術)や、膣からの方法(腟式子宮全摘術)、また腹腔鏡を使って腹腔を観察しながら膣から摘出する方法(腹腔鏡下腟式子宮全摘術)もあります。通常の入院期間は約10日間前後です。

広汎子宮全摘術
広汎子宮全摘術
子宮本体だけではなく、子宮の周囲の組織(周囲の靱帯やリンパ節)を骨盤壁の近くまで広く切除します。卵巣については、患者さまの年齢、癌の進行度によっては温存が図れる場合もあります。通常の入院期間は3-4週間ですが、術後に放射線療法を追加する場合もあります。合併症として、排尿・排便障害、リンパ嚢腫、リンパ浮腫などが問題とされ、施設によっては60才以上の高齢の方には実施していないところもあります。

放射線療法
放射線を照射することにより、子宮頸部あるいはリンパ節などに転移した癌細胞を殺す治療法です。
通常身体の外部から骨盤にあてる外照射と、子宮頸部に線源を入れて行う腔内照射とがあり、この2つを組み合わせて治療します。通常の入院期間は7-8週間です。療後の晩期に起こってくる障害として、腸閉塞、性生活に与える影響、膣と膀胱・直腸の瘻孔形成などが挙げられます。
化学療法
抗癌剤を投与して、現在ある癌細胞を殺し、遠隔転移を予防する治療法です。効果のある薬剤を一種類から数種類併用して投与します。投与方法は薬の種類によって異なり、内服や、注射での投与が一般的です。最も効果が期待できる注射剤として、多くの施設でシスプラチンという薬が用いられているようです。
抗がん剤は、シスプラチンの他にエトポシド、UFTが承認されています。
化学放射線同時療法
近年行われ始めた治療法で、放射線療法と同時にシスプラチンという抗癌剤を週一回点滴投与するものです。シスプラチンを投与することで、遠隔転移を予防するだけでなく、放射線の効果を高める効果もあると言われています。実際に放射線単独で行うよりシスプラチンを併用することによって治療成績が改善すると報告されており、米国では放射線療法に化学療法を併用することが広く推奨されています。

子宮頸がんの予後(新潟大学(1997-2006))

進行期 患者数(人) 5年生存率(%)
I期 181 83.4
II期 52 65.6
III期 28 46.6
IV期 18 21.3
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