【はじめに】

アレルギー性鼻炎とは、ある物質(抗原)が鼻に入り、鼻の粘膜にアレルギー反応が引き起こされることによる病気で、くしゃみ、鼻みず、鼻づまりが3大症状です。アレルギー性鼻炎には、ダニやハウスダストなどによって起こる通年性アレルギー性と、スギ花粉などによって起こる季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)があります。通年性アレルギー性鼻炎の方は、全国的には約18%いるといわれています。花粉症は、スギ花粉症がよく知られていて、花粉症の約70%を占めていますが、スギ以外でもヒノキ、カモガヤ、ブタクサ、シラカバなどがあります。スギ花粉症の方は、全国的には15%程度いるといわれていますが、年々増加してきていて、今や現代病とか国民病とか言われるようになってきています。ここでは、鼻アレルギー診療ガイドラインに沿ってアレルギー性鼻炎の治療について記しています。アレルギー性鼻炎は、完全に治すことが難しい病気です。アレルギー性鼻炎の治療としては、症状をやわらげ、生活の不都合をなくし、生活の質を向上させるのが目的となります。それぞれのライフスタイルや症状に応じて治療法を選択していくのが良いと思われます。
【アレルギー性鼻炎の治療】
- I. 抗原の除去と回避(グレードA)
これは、だれもが行えるもので、アレルギー性鼻炎の治療の第一歩です。積極的にこころがけましょう。
- 室内ダニの除去
- 室内の掃除には、排気循環式の掃除機を用いる。1回20秒/m2の時間をかけ、週に2回以上掃除する。
- 布製のソファー、カーペット、畳はできるだけやめる。
- ベッドのマット、布団、枕にダニを通さないカバーをかける。
- 室内の湿度を50%、室温を20~25℃に保つよう努力する。
- スギ花粉の回避
- 花粉情報に注意する。
飛散の多いときの外出を控える。
- 飛散の多いときは、窓・戸を閉めておく。
- 飛散の多いときは、外出時にマスク・メガネを着用する。
- 外出時、毛織物などのコートは避ける。
- 帰宅時、衣服や髪をよく払い入室する。洗顔、うがいをし、鼻をかむ。
- 掃除を励行する。
- ペット(とくにネコ)抗原の減量
- できれば飼育をやめる。
- 屋外で飼い、寝室に入れない。
- ペットとペットの飼育環境を清潔に保つ。
- 床のカーペットをやめ、フローリングにする。
- 通気をよくし、掃除を励行する。
- II. 薬物療法(グレードB)
- 薬による治療には、表にあげるような、さまざまな種類のものがあります。くしゃみや鼻みずにより効果のあるもの、鼻づまりに良く効くもの、症状のひどいときに短期間のみ飲むものなど、それぞれに特徴があります。また効果の高いものでも副作用の面で、眠気の強いものもあるので、それぞれの人に応じて、症状や程度、さらにライフスタイルに合ったものを選択する必要があります。医療機関を受診し、医師と相談しながら治療を行っていくのが良いと思います。また服用の時期も、花粉症の場合は、シーズン前からアレルギー治療薬を飲み始めるという、初期療法が有効なので、あらかじめ医療機関を受診し、医師と相談してみてください。それから市販のものを使用する際も、必ず一度は医療機関を受診し、診断を受けてから使用することをお勧めします。
ケミカルメディエター遊離抑制薬 ケミカルメディエター受容体拮抗薬 1) ヒスタミン拮抗薬(抗ヒスタミン薬)
第1世代
第2世代
2) トロンボキサンA2拮抗薬
(抗トロンボキサンA2薬)
3) ロイコトリエン拮抗薬(抗ロイコトリエン薬)Th2サイトカイン阻害薬 1) 局所用
2) 経口用ステロイド薬 自律神経作用薬 1) α交感神経刺激薬
2) 副交感神経遮断薬(抗コリン薬)その他 変調療法薬、生物製剤、漢方薬 - III. 特異的免疫療法(抗原特異的減感作療法)(グレードB)
減感作療法 原因となっている抗原を、少しずつ量を増やしながら注射していく方法(皮下免疫療法)や舌下に投与する方法(舌下免疫療法)があります。ダニ抗原やスギ抗原に対して反応を弱めていく方法ですが、皮下免疫療法では、非常に稀にアナフィラキシーショックなどの副作用が報告されていますが、舌下免疫療法では、重篤な副作用は報告されていません。
いずれの治療法においても、長い期間(3~5年)治療が必要となりますが、特異的免疫療法は、唯一アレルギーを治癒させることができる可能性のある治療です。60%~70%に有効と言われています。スギやダニが抗原となっている方で、症状が強く継続した通院が可能な方にはお勧めの治療です。- 手術(グレードB)
- アレルギー性鼻炎に対する手術としては、下記に示したようなものがあります。鼻づまりに対するものが主体で、内服などの保存的治療で改善が得にくい方に有効な治療法です。aなどは、外来でも可能なものも多く、広く行われていて、鼻づまりだけではなく、くしゃみや鼻水に対してもある程度効果が期待できます。比較的安易にできますが、再発の可能性もあります。鼻づまりのひどい方、保存的治療で効果の得にくい方は、医療機関で相談してみてください。
- 鼻粘膜の縮小と変調を目的とした手術:電気凝固法、凍結手術、レーザー手術法、80%トリクロール酢酸塗布。
- 鼻腔通気度の改善を目的とした鼻腔整復術:粘膜下下鼻甲介骨切除術、下鼻甲介粘膜切除術、鼻中隔矯正術、高橋式鼻内整形術、下鼻甲介粘膜広範囲切除術、鼻茸切除術。
- 鼻漏の改善を目的とした手術:vidian神経切断術、後鼻神経切断術。
- その他(グレードC1)
- 以上の治療法以外にも、日常生活で、ストレスを避け、睡眠を十分とる。風邪を引かないように心がける。タバコ・アルコールは控える。栄養の偏らない食生活を送る。などが、アレルギー性鼻炎の症状の緩和に役立つと思われます。
(2018.11.16更新)