特定非営利活動法人 標準医療情報センター

看護師付添いサービス ナースアテンダント

  • 病気の標準治療法解説 疾患一覧へ
  • 診療ガイドラインとは

【1.慢性腎臓病(chronic kidney disease: CKD)とは】

CKDは、自覚症状がないまま腎臓の働きが徐々に低下する病気です。CKD患者数は人口の1割を占めると推定されています。国民病です。
進行すると腎臓の代わりをする医療(腎代替医療、じんだいたいいりょうと読みます)である透析医療(腹膜透析、血液透析)あるいは腎移植が必要になることはよく知られていると思います。さらに知ってもらいたいことは、CKDは、これらの腎代替医療が必要になる危険因子である前に、心血管疾患の危険因子であることです。CKDが注目されて、国家規模で対策に取り組んでいる理由はここにあります。
CKDの主要な原因は、高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病です。これらの生活習慣病患者は、CKDを(潜在的に)抱えている危険性があります。さらに、加齢、喫煙、消炎鎮痛薬の常用などはCKDの危険因子(リスクファクター)です。

【2.腎臓の代表的な働き】

はじめに、腎臓の代表的な働きに目を向けると、腎臓の代表的な働きは、血液中にある老廃物など(ごみ)を尿として捨てることです。家庭生活でのごみ出しになぞらえて、腎臓の働きを考えてみましょう。皆さんは、ごみと必要なものと分別して捨てているはずです。さらに、こまめに捨てて、貯まらないようにしていると思います。
血液中では血球や蛋白などの必要なものと老廃物など(ごみ)とが混ざっています。腎臓は、ごみが身体に貯まらないように大きな速度で血液をろ過して尿を作って、ごみだけを捨てています。

【3.CKDを早期発見するには】

CKDは、早期には自覚症状がありません。自覚症状は早期発見の手がかりとして期待できないのです。腎臓の代表的な働きであるごみ捨ての状況を調べると、CKDを早期に発見できるのです。

(1)尿検査:必要なものまで捨てていないか?
ごみの分別能を調べます。尿定性検査では、蛋白尿と血尿の有無が分かります。尿中に蛋白や赤血球を捨てている状態(蛋白尿、血尿)は異常です。 尿定量検査では、尿蛋白濃度(mg/dL)、尿クレアチニン濃度(mg/dL)を測定します。この比である尿蛋白/クレアチニン比(g/g・Cr)は、1日尿蛋白量(g/day)に相当します。尿蛋白が多いと腎臓の働きが低下しやすくなります。
(2)血液検査:ごみを貯めていないか?
ごみ処理能を調べます。ごみの代表としてクレアチニン値を測定します。クレアチニン値、性別、年齢の3つの情報から、推算糸球体ろ過量(estimated glomerular filtration rate: eGFR)を算出できます。これが低下していれば、腎臓が本来の調子にないことが分かります。

【4.CKDの定義】

下記の1、2のいずれか、または両方が3カ月間以上持続する場合をCKDと言います。

表1 CKDの定義

1.腎障害の存在が明らか
(1) 蛋白尿の存在、または
(2) 蛋白尿以外の異常:病理、画像診断、検査(検尿/血液)など
2.推算糸球体濾過量(estimated glomerular filtration rate: eGFR) < 60 mL/min/1.73m2

NKF K/DOQI clinical practice guidelines (Am J Kidney Dis 39 (2 suppl 1):S1-S266, 2002 Definition and Classification of CKD: A Position Statement from KDIGO(Kidney Int 67:2089-2100, 2005)

改めてCKDの定義を見ると、1.(2)の一部を除くと、腎臓の代表的な働きであるごみ捨ての状況に着目していることが理解できると思います。

表2のように、CKDはeGFR値に基づいて5つの病期(ステージ)に分類されます。ステージに応じた治療が必要になります。

表2 CKDの病期(ステージ)分類

病期 定義 糸球体ろ過率(mL/min/1.73m2
  ハイリスク群 ≧ 90(CKDのリスクファクターを有する状態で)
腎障害はあるが、機能は正常以上 ≧ 90
軽度低下 60 - 89
中等度低下 30 - 59
高度低下 30 - 59
腎不全 <15
※各病期において移植患者の場合にはTを、また、病期5においては透析患者にDを付す
※NKF K/DOQI clinical practice guidelines (Am J Kidney Dis 39 (2 suppl 1):S1-S266, 2002
Definition and Classification of CKD: A Position Statement from KDIGO(Kidney Int 67:2089-2100, 2005)

【5.受診と検査】

まずは医療機関を受診してください。
自分がCKDであることに気づいていない、潜在的なCKD患者が多いのです。かかりつけ医を受診すれば、尿検査、血液検査を受けられます。自覚症状がない早期のCKDを発見するコツは、自分の腎臓に目を向けて、医療機関を受診して検査を受けることです。

検査結果により、腎臓専門医を受診してください。
CKD診療ガイド(日本腎臓学会編)では、かかりつけ医が腎臓専門医に紹介するタイミングとして、以下のいずれかの場合を挙げています。

(1)血液検査
eGFR < 50 mL/min/1.73m2
(2)尿定量検査
尿蛋白/クレアチニン比(g/g・Cr)≧ 0.5
(3)尿定性検査
蛋白尿2+以上、蛋白尿1+以上かつ血尿1+以上

CKDでは、かかりつけ医と腎臓専門医との病診連携を活用して、CKDのステージに応じた治療を受けることが大切です。

【6.腹膜透析を知っていますか?】

ステージ5でeGFRが10 mL/min/1.73m2未満になると、腎代替医療が必要になります。腹膜透析、血液透析、腎移植の3つの腎代替医療のうち、認知度が低い腹膜透析について述べます。

1.腹膜透析に必要な手術
腹膜透析を行うには、お腹(正しくは腹腔、ふくくうと読みます)に透析液の交換に必要な腹膜透析用カテーテルを埋め込む手術を受けます。
2.腹膜透析の仕組み
透析液をお腹に入れて(注液と言います)、貯留します。
この間に腹膜を介して、腹膜にある毛細血管内の血液と透析液との間で、物質の移動が行われます。血液内にある要らない老廃物や余分な水分は透析液のあるお腹側に出ます。必要な透析液内の物質は毛細血管内に入ります。
一定時間貯留後、老廃物や余分な水分を含んだ透析液をお腹から出します(排液と言います)。
3.腹膜透析の方法
腹膜透析はperitoneal dialysis(PD)の日本語訳です。ですから、PD(ピーディー)と略称されます。
PDを行うことは、透析液を交換することです。透析液は袋(バッグ)に入っているので、透析液の交換をバッグ交換と言います。カテーテルを通して、お腹に貯めていた透析液を空のバッグに排液し、その後新しい透析液の入ったバッグからお腹に注液します。バッグ交換では清潔に注意します。
自分あるいは家族が行う在宅医療です。自宅、勤務先、旅行先などで行います。1回のバッグ交換には20~30分かかります。
(1)continuous ambulatory peritoneal dialysis (CAPD、シーエーピーディーと読みます)
バッグ交換は、図1のように、6~8時間ごとに1日4回(朝、昼、夕、就寝前)程度です。 日本語では、連続携行式腹膜透析と言います。

図1 CAPD 4回交換1日のスケジュールの例

図1

提供:テルモ株式会社

(2)automated peritoneal dialysis (APD、エーピーディーと読みます)
1日1回、図2のように、夜間就寝中に器械(自動腹膜透析装置)を使って透析を行う方法です。日本語では、自動腹膜透析と言います。

図2 APD 1日のスケジュールの例

図2

提供:テルモ株式会社

4.腹膜透析の利点(血液透析との比較)
(1)透析を始めても腎機能が完全に廃絶しなければ尿を作ることができます。透析を始めてからも尿を出す能力があることを残存腎機能と言います。腹膜透析は血液透析と比べて、残存腎機能を長い期間保つことができます。
(2)体外循環を行わないこと、透析が連続的に行われることから、心臓血管への負担が少ない。
(3)在宅医療です。通院と治療で拘束される時間が少ない。バッグ交換を自分の予定に合わせてできます。
5.腹膜透析の位置づけ
3つの腎代替医療を組み合わせて、末期腎不全を管理することが大切です。
腎代替医療への導入期、週3回の血液透析施設への通院は、1週間の生活リズムを大きく変えてしまいます。一方、在宅医療である腹膜透析は、毎日を同じ生活リズムで送ることができます。外来通院は2~4週間に1回です。血液透析と比べて、腹膜透析は生命予後に大きく関わる残存腎機能の保持に優れています。残存腎機能が廃絶したら、腹膜透析だけでは、十分な透析効率を得ることはできません。
以上から、腎代替医療を腹膜透析から開始し、残存腎機能が廃絶したら、あるいは、腹膜透析に関連する合併症の発症などで腹膜透析の継続が困難になったら、血液透析に移行する包括的腎代替医療は理にかなっています。腎移植は、ドナーが確保できれば、優先される医療です。

【7.CKDの予防】

生活習慣病がCKDの大きな原因です。悪い生活習慣は、糖尿病、高血圧、脂質異常症、高尿酸血症、肥満、メタボリックシンドロームなどのさまざまな生活習慣病を招きます。複数の生活習慣病を抱えている方も珍しくありません。良い生活習慣は、これらの生活習慣病を遠ざけます。悪い生活習慣を改善し、良い生活習慣を継続するための鍵は、主体的に取り組むことです。

ページトップへ