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厚生労働省や学会などの公的機関から、「膀胱炎の治療マニュアル」という形で公式に発行されているものは残念ながら現在のところありません。 2001年度に日本感染症学会・日本化学療法学会編集の「抗菌薬使用の手引き」が出版されており、その中に急性単純性膀胱炎の記述がありますので、紹介させていただきます。

急性単純性膀胱炎は腎臓や膀胱になにも疾患がなく発症する膀胱炎で、おもに性的活動期の女性に多くみられます。 大腸菌が原因になることが多く、抗菌薬(抗生物質)が良く効きます。

【病態】

急性単純性膀胱炎

急性単純性膀胱炎は、20~40才の女性の25~35%が罹患するといわれています。 感染症としては比較的軽症で治療も簡単と考えられていますが、症状の持続は平均6.1日、平均2.4日の日常活動の制限、平均1.2日の就業制限、平均0.4日の臥床がみられるというデータもあり、社会的損失は決して少なくありません。

【診断】

病気の診断は、頻尿(尿の回数が増える)、排尿痛(排尿時の痛み)、尿の混濁、残尿感、膀胱付近の不快感などの症状とともに、尿の検査で膿尿(尿の中の白血球)、細菌尿(尿の中の細菌)が見つかれば、急性膀胱炎と診断できます。 発熱や全身倦怠感などの重篤な症状がなく、血液中の白血球増多や血沈の亢進、CRPの上昇などの炎症所見がないことで腎盂腎炎と区別できます。 細菌尿は尿中の細菌が104CFU/ml以上、膿尿については尿中の白血球数10個/mm3以上が基準になっています。

原因菌と薬剤感受性(薬剤の効果)

急性膀胱炎の原因菌は、大腸菌が70~95%を占めます。 その他に、ブドウ球菌属、プロテウス、肺炎桿菌属、腸球菌属などの細菌が認められています。 10~15%の症例では一般検査で一般の細菌が証明されないこともあり、クラミジア、ウレアプラズマ、マイコプラズマなどの関与も考えられています。 急性膀胱炎の原因となる大腸菌は、多くの抗菌剤が良く効きますが、ペニシリン系の薬剤に対する耐性菌が徐々に増加しています。 ニューキノロン系や新経口セフェム系の薬剤の耐性菌はほとんどありません。

【治療】

急性膀胱炎の26%は、2週間以内に自然に治癒するともいわれており、抗菌剤の内服は短期間で十分と思われます。 欧米では、ST合剤やサルファ剤などの薬剤が第一選択の薬として推奨されていますが、わが国では、これらの薬剤には使用制限があり、第二選択の薬剤になっています。 ペニシリン系薬や第一世代セフェム系薬による短期間の治療では膣や腸内に残存した大腸菌によって早期の再感染が起こることが指摘されています。 その一方で、ニューキノロン系薬や新経口セフェム系薬は良い効果が知られており、勧められる薬剤です。

(表1)急性単純性膀胱炎における使用薬剤と投与期間
  第一選択 第二選択
若年女性の
膀胱炎
単回投与法 一部のニューキノロン系薬  
3日間投与法 ニューキノロン系薬 ST合剤
7日間投与法   新経口セフェム系薬
再発性膀胱炎 ニューキノロン系薬
(3日間投与)
セフェム系薬(経口薬)
(7日間投与)
閉経後の婦人の膀胱炎 ニューキノロン系薬
(3日間投与)
セフェム系薬(経口薬)
(7日間投与)
a.投与法(表1)
以前では抗菌薬は7~10日間程度内服してきましたが、最近は単回投与や3日間投与法などが試みられています。 一部のニューキノロン系薬では単回投与も有効といわれていますが、ST合剤の1週間投与やニューキノロン系薬の3日間投与に比べると治療効果は劣るとされています。 したがって、急性膀胱炎の治療についてはニューキノロン系薬の3日間投与が基本となります。
b.女性の再発性膀胱炎
急性膀胱炎の約半数は1年以内に再発すると言われています。 研究からはその大部分が再感染であることが証明されています。 腸や膣などに残存する菌が原因となっていることがうかがわれ、このような例にもニューキノロン系薬の3日間投与が有効です。
もちろん、何回も繰り返す場合は泌尿器科的な精密検査が必要となります。
c.閉経後の婦人における急性膀胱炎
閉経後の婦人にも膀胱炎はしばしば認められます。 この場合再発が多く、抗菌剤の投与は十分に行う必要があります。 大腸菌以外の菌が発見される可能性が高くなることも特徴です。 このような例にもニューキノロン系薬の3日間投与が有効です。
d.治療後の効果判定
尿の中から薬剤が消失する投与終了7日後に治療効果を判定します。 また、4~6週間後の症状と尿の検査(膿尿・細菌尿)で再発の有無を検討します。
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