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【円形脱毛症の頻度と症状】

 円形脱毛症は、その名のとおり、基本的には円く毛が抜けてしまう脱毛症ですが、頭全体や全身の毛が抜けてしまうこともあります。前者を 通常型 つうじょうかた ] 図2)、後者を 全頭型 ぜんとうかた ] ないし 全身型 ぜんしんかた ] 図3)と言います。ほかに少ないですが、頭髪の生え際が帯状に抜けてしまう 蛇行型 だこうかた ] もあります。
発生頻度は人口の1~2%とみられ、100人に1~2人は円形脱毛症になる状況です。どんな年齢でもなりますが、1/4は15歳以下の小児で、また、全頭・全身型は小児に多く見られます。痒みや痛みなどの自覚症状はなく、通常型は理容師や家人に指摘されてわかることが多く、また、全頭・全身型は数週~1、2か月のうちにかなり抜け、本人や家人が驚いてしまいます。通常型がたくさんできて、全体になり、全頭型になることもあります。
脱毛が進行している部位では、 感嘆符毛 かんたんふもう ] 黒点 こくてん ] などの 病的毛 びょうてきもう ] 図4)が見られ、周囲の毛もとても抜け易い状態です。脱毛が止まり、回復期にある部位では、中央部から軟毛が再生して、これが硬毛に成長します。白髪混じりの人の場合、黒い毛が先に抜けるために、円く部分的な白髪になることもあります。また、脱毛部位に回復してくる毛が白髪のこともあります。爪も侵され、抜けたりはしませんが、約1/4の人で 点状陥凹 てんじょうかんおう ] (へこみ)や 横溝 おうこう ] Beau線 ビューせん ] )ができます。

円形脱毛症の通常型

図2 円形脱毛症の通常型
円く脱毛している。

円形脱毛症の全身型

図3 円形脱毛症の全身型
頭髪がほとんど脱落し、眉毛、
まつ毛も消失している。

病的毛が見られる脱毛が進行する病巣

図4 病的毛が見られる脱毛が進行する病巣
白色矢印:感嘆符毛.短く切れた毛で、根元が細い。
桃色矢印:黒点.毛穴に詰まった萎縮した毛の塊。


【円形脱毛症のメカニズム】

 円形脱毛症で毛が抜けてしまう仕組みは、自己免疫病の1つとして説明されます。病的毛がある脱毛病巣では、成長期毛根の毛母や毛乳頭の中、その周囲に多数のリンパ球が集まって、毛根を攻撃しています。リンパ球は、通常、免疫、つまり体を守る働きを果たすものですが、それが自己の体の一部である毛根を攻撃してしまいます。そのため、成長期毛根はダメージを受け、切れやすい病的な毛しか作れず、さらに毛を作れなくなり脱毛します。
このようなリンパ球攻撃がなぜ起こるかは未だ確実な理由は不明ですが、自己免疫反応を起こしやすい体質があるようです。円形脱毛症の約2割の人に血族に円形脱毛症があり、また、二卵性双生児ではほとんどが片方だけですが、一卵性双生児の1人が円形脱毛症だと、もう1人が円形脱毛症になる率は5割以上です。遺伝子異常などは判っていませんが、遺伝的素質は考えられます。
しばしば、ストレスで円形脱毛症が起きると言いますが、ストレスがきっかけで脱毛が始まる人は約2割の人で、ストレスが引き金になることがあると言えますが、ストレスが原因とは言えません。

【円形脱毛症の治療】

円形脱毛症に行われる治療法はに挙げたごとくです。

表.円形脱毛症の治療法
分類 治 療 法
局所 外用:ステロイド、塩化カルプロニウム
特殊:PUVA療法、雪状炭酸圧抵療法、局所免疫療法、ステロイド局所注射
全身 内服:グリチルリチン、セファランチン、ステロイド
点滴:ステロイドパルス療法
1)治療の考え方
 前述のリンパ球反応が治まれば、毛根は容易に元にもどり、健康な毛が再生します。円く抜けて数か所程度なら、数か月はかかりますが、自然回復もしばしばです。しかし、通常型でも次々にできたり、また、全頭型や全身型では、1年以上も回復しないこともあり、このような難治の場合、治療法の選択が問題です。図5は、最新の「円形脱毛症の診療ガイドライン」(日本皮膚科学会)の治療方針です。 PUVA療法 プバりょうほう ] 雪状炭酸圧抵療法 せつじょうたんさんあっていりょうほう ] ないし 局所免疫療法 きょくしょめんえきりょうほう ] は特殊な治療法ですが、難治の場合に行います。
円形脱毛症の治療方針

図5 円形脱毛症の治療方針(日本皮膚科学会の資料より引用、簡略化)

2)ステロイド治療
 脱毛範囲が狭く、進行しない場合は、ステロイド(副腎皮質ホルモン)外用やグリチルリチンあるいはセファランチンの内服療法で様子をみます。
しかし、進行期の脱毛にはこれらはほとんど無効ですので、とくに広範囲の場合、投与可能な条件が揃えば、一時的にステロイド全身投与をすることもあります。
ステロイドパルス療法とは、内服の10~20倍の大量のステロイドを3日間だけ点滴する方法です。ステロイドは免疫反応を抑制する作用があり、円形脱毛症の自己免疫反応を止め、かなりの効果があります。しかし、ステロイド全身投与を何週~数か月も続けると 満月様顔貌 [ まんげつようがんぼう ] や糖尿病などの副作用が出て、好ましくありません。あくまでも一時的で進行状態をくい止め、その後、回復に向かえば良いわけです。くい止めても、さらに脱毛する場合、全身投与はしません。
広範囲な全頭・全身型で3か月以上も続く場合(固定期)は、ステロイド全身投与で例え少し効果があっても中止すると脱毛し、長期では副作用が必ず出現しますので、してはいけない治療です。また、小児では成長障害の危険があり、どんな場合も小児の円形脱毛症にはステロイド全身投与はしてはいけないものです。固定の通常型で、1~2回のステロイド局所注射が良く効くことがあります。
一方、ステロイド外用でも、同じ部位に半年~1年以上も続けると、皮膚萎縮を起こしますので、効果がなければ中止します。
3)PUVA療法
 ソラーレン(Pを脱毛部に塗って長波長紫外線(UVA)を当てます。有効率は70%程度ですが、紫外線は皮膚を障害する作用もあり、小児例には適応になりません。ソラーレンを内服してUVAを当てる方法もありますが、入院が必要です。
4)雪状炭酸圧抵療法
 治療時に炭酸ガスボンベから作った雪状のドライアイスを固めて棒状にし、脱毛部に軽く一瞬圧抵する冷却療法です。1~2週に1回しますが、同じ部位に1年以上も行うと皮膚が瘢痕になる可能性があり、数か月で効果が無ければ中止します。診療ガイドラインには載っていませんが、有効率は70%くらいです。圧抵で痛みが出るので、やはり小児にはやりにくい治療です。また、繰り返し圧抵した部位は色素沈着になります。
5)局所免疫療法
 接触アレルギー(いわゆる「かぶれ」)を利用した治療法です。つまり、だれでもかぶれるような物質(SADBEやDPCP)を脱毛部に塗って、わざと皮膚炎を起こします。皮膚炎の免疫反応が円形脱毛症の自己免疫反応を抑えてくれ、毛根が再生します。1~2週に1回程度行いますが、有効率は90%で、有効な場合、2~3か月で発毛が見られます。強い皮膚炎は不要で、治療して1~2日で軽く赤くなり、痒みを感じない程度に留めます。あまり強い皮膚炎を起こすと全身に中毒疹や自家感作性皮膚炎を起こしたり、まれにはアナフィラキシーショックを起こす危険もあります。したがって、自宅でできる治療ではなく、皮膚科専門医が慎重に行います。しかし、有効率が高く、苦痛もないので、慎重に行えば、小児の難治例にも適します。ただし、小児では成人よりも有効率はかなり低いのが現実です。この治療法では、免疫反応を抑えるステロイドは外用も内服も併用しません。
6)その他
 全頭・全身型では、治療が奏功しても、数か月~数年も回復まで長引き、また、治療の効果無く、年余に及んで広範囲な脱毛状態が続くこともあり、このような場合、「かつら」の使用も重要になります。また、全頭・全身型は小児に多く、しかも難治であると、児の精神的発達への影響や「いじめ」や「登校拒否」などにも注意を要します。
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