接触皮膚炎│特定非営利活動法人 標準医療情報センター


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接触皮膚炎の原因

日本では、接触皮膚炎について、厚生労働省や学会などからの「治療ガイドライン」と呼べるものは、いまのところありません。ここでは、世界中で広く一般的に行われている標準的な治療(診断・検査・予防を含む)について、外国のガイドラインも参考にして説明します。

【接触皮膚炎とは?】

一般的には「かぶれ」と呼ばれ、極めて日常的な疾患です。その症状から、接触蕁麻疹と接触皮膚炎(狭義)に分けられます。それぞれ、特異的な免疫が関与するかしないかにより、アレルギー性と刺激性(あるいは非アレルギー性)に分かれます。光が関与する場合もあります。以下に代表的な分類を示します。

接触蕁麻疹 アレルギー性接触蕁麻疹
非アレルギー性接触蕁麻疹
アレルギー性とは?
ある特定の物質に対する特異的な免疫反応により発症します。いわゆる「肌に合わない」という状態であり、同じ物質に触れても発症するかしないかはひとによって異なります。

刺激性(あるいは非アレルギー性)とは?
ある物質がもともと皮膚に障害をおこす性質を持っているために起きます。従って、条件(物質の濃度、接触時間など)がそろえば、誰にでも起きる可能性があります。
接触皮膚炎(狭義) アレルギー性接触皮膚炎
刺激性接触皮膚炎
光アレルギー性接触皮膚炎
光毒性皮膚炎

【接触皮膚炎の治療】

接触皮膚炎の治療は、症状を軽くする・治すだけでなく、繰返さないための注意も重要です。それには、なぜ接触皮膚炎がおきたのかを解明する必要があります。そこで、ここでは、実際の治療にいたる診療の流れ、すなわち、[1]診断・原因の推定[2]原因検索[3]治療、について説明します。

[1]診断・原因の推定

自分の症状が「かぶれ」とは気付いていない場合も多く、まず、接触皮膚炎であるかどうかを見極め、原因を推測することが重要です。そのためには、皮膚科医による問診・診察が必要です。次のような事に注意して問診・診察をします。

  1. 発症は?:
    部位、自覚症状(かゆみ、痛み等の有無)、皮疹の性状など
  2. 症状の進行具合:
    原因らしきものとの接触から発症までの時間、発症とその状況の関係(家、職場、発汗、日光、季節など)、など
  3. 軽快する状況:
    週末・休日との関係、治療に対する反応(すぐ治るのか、止めると再発するのかなど)、ストレス・不安との関係、など
  4. 仕事・職歴:
    仕事の種類・具体的内容、化学物質との接触の有無、他の症状(くしゃみ、眼の刺激感など)の有無、洗剤の使用(種類、使用頻度)、手洗いの頻度、など
  5. 仕事以外での接触状況:
    趣味の種類・内容、ペットの有無、化粧品・香水・スキンケア用品(石鹸、シャンプーなど)、日用品(家庭用・洗濯用洗剤、床用ワックスなど)、手袋の使用状況、など
  6. 家族歴:
    アトピー素因の有無、他の皮膚疾患の有無、家族の接触皮膚炎の有無、など
  7. 既往歴:
    過去の接触皮膚炎の有無・原因、過去の治療、など

[2]原因検索

 問診・診察をもとに、原因をつきとめることが重要です。患者さんが想像もしなかったものが原因のこともあります。接触皮膚炎をきちんと治し、再発を避けるためには必要不可欠です。原因検索には皮膚テストを行います。いくつかの方法がありますが、接触皮膚炎の種類や原因物質の種類に適した方法を選んで行います。

  1. オープンテスト:
    物質を蒸留水やワセリンで希釈したものを皮膚に塗布。
  2. ROAT(repeated open application test):
    肘窩に1日2回物質を続けて塗る方法。
  3. プリックテスト:
    接触皮膚炎│パッチテスト通常、即時型反応を調べるために行う。物質を1滴たらした後、専用の針で刺す(出血しない程度)。
  4. パッチテスト
    接触皮膚炎、特にアレルギー性接触皮膚炎の検査として最も標準的で感度・特異度の高い方法。専用のパッチテストユニットに物質をのせて背部に貼る(36~48時間)。
  5. 光パッチテスト:
    光アレルギー性接触皮膚炎の検査法。パッチテストに紫外線照射を組み合わせる。
  • *他に、セミオープンテスト、スクラッチテストなどの方法もあります。
  • *いずれの検査・判定も、医療機関で行います。決して自己判断で行ってはいけません。特に接触蕁麻疹の場合は、危険な状態(ショック)に陥る可能性もあります。
  • *現在のところ、原因を確実に調べられる血液検査はありません。接触蕁麻疹の場合は、血液を用いて行うRASTという検査法が役立つことがありますが、信頼性の点で劣ります。

[3]治療

 治療は、いまの症状を軽快させるいわゆる対症療法と、原因対策・予防に分けられます。

対症療法

  1. 接触蕁麻疹の場合
    抗ヒスタミン薬の内服あるいは注射が行われます。重篤な場合(アナフィラキシー)は、エピネフリンの注射と共に、輸液、ステロイド点滴、気道確保などが必要となることがあります。
  2. 接触皮膚炎(狭義)の場合
    ステロイド外用薬により炎症の沈静化をはかります。抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬の内服の併用もよく行われます。紫外線療法を行うこともあります。皮膚炎が重症あるいは広範囲の場合には、ステロイドの内服が必要な場合もあります。

原因対策

  1. 接触蕁麻疹の場合
    原因となる物質を明らかにし、それに直接触れないことが重要です。(特にラテックスアレルギーは、医療器具などにより誘発される可能性があるため、医療関係者にその旨をきちんと伝える必要があります)。また、重篤になる(アナフィラキシー)危険が高い場合は、治療薬の常備・携行が必要な場合もあります。
  2. 接触皮膚炎(狭義)の場合
    原因となる物質を明らかにし、それに直接触れないことが原則です。特にアレルギー性接触皮膚炎では、原因物質に触れるとほぼ間違いなく再発するため、より一層の注意が必要です。しかし、職業や家事などで、原因との接触が避けられない場合もあります。手の刺激性接触皮膚炎(いわゆる手荒れ)では、手袋や日常的なハンドクリームの使用が有効です。職業性のアレルギー性接触皮膚炎(美容師など)では、手袋の使用に加えて、保護クリーム(皮膚に薄い被膜をつくる)の使用が有効なことがありますが、職場の異動や転職を余儀なくされることもあります。

以上の、治療へといたる流れを模式的に示すと、次のようになります。

接触皮膚炎の治療にいたる診療の流れ
接触皮膚炎の診療
*注意1 「原因」とは、原因物質のことであり、原因製品のことではありません。従って、明らかに非日常的製品による場合でも、その成分が日常的製品に含まれている可能性があるときは、左の図の2)のような対応が必要です。
*注意2 左の図の1)に相当すると考えられる場合でも、症状が続くときは漫然と対症療法を続けてはいけません。その場合は、2)と同様、きちんと原因検索を行います。
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