子宮筋腫│特定非営利活動法人 標準医療情報センター


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【子宮筋腫とは】

 子宮は内膜、筋層、漿膜の三層により構成されていますが、この筋層部分は平滑筋という組織により出来上がっています。女性が妊娠した時に、赤ちゃんの成長に従って子宮が大きく伸びたり、またお産が終わった時に子宮が収縮して元の大きさに戻るのもこの平滑筋の働きで、子宮の重要な働きの一つを担っているといえます。この平滑筋が腫瘍として大きくなったものを筋腫といいます。子宮筋腫は成人日本人ではよくみられる疾患の一つであり、報告によって異なりますが、30,40代女性の30~50%に認められるものです。

 筋腫は良性の腫瘍ですが、大きくなってくる場所により、三つに分けます(図1)。

漿膜下筋腫
漿膜下筋腫
子宮の外側にある漿膜部分に筋腫が増大してきます。増大してくる方向が遮るものがないお腹の中ですので、容易に大きくなります。またある程度大きくなるまで症状のないことが特徴的といえます。

筋層内筋腫
筋層内筋腫
子宮筋層の中で筋腫が大きくなってくるものです。筋腫が大きくなるのに、伴って子宮内膜も拡大してくるため、過多月経、月経困難症などの症状が出てきます。

粘膜下筋腫
粘膜下筋腫
子宮内宮へ粘膜の中で大きくなってくる筋腫です。子宮内腔の大きさが限られているため、漿膜下筋腫、筋層内筋腫程大きくなりませんが、子宮内膜の大きさに直接影響を与えるため、筋腫自体の大きさは小さくても、過多月経などの症状が早く出ることが特徴です。また筋腫の影響により、内膜が変形するために受精卵が子宮内膜へ付着(着床)することを妨げ、不妊の原因にもなるといわれています。

【子宮筋腫の原因】

 子宮筋腫の明らかな原因はいまだわかっていませんが、女性ホルモンの一つであるエストロゲン(卵胞ホルモン)の影響を受けているであろうといわれています。それは、卵胞ホルモンの分泌が極度に低い、小学生などにはほとんど見当たらないこと、閉経してエストロゲンの分泌が低下した女性ではゆっくりではありますが筋腫が小さくなることが見られること、などから判断されます。
これらのことより、筋腫の薬物治療の一つとして、エストロゲンの分泌を遮断する薬剤が用いられています。この治療により、生理が止まると同時に、個人差はありますが筋腫が小さくなることが観察されます。

【筋腫の症状】

 子宮筋腫の症状として、一番多くみられるのは、過多月経(生理の量が若い時に比べて多くなる、生理の期間が長くなる)で、この症状は筋腫により子宮内膜の面積が大きくなることによります。また月経血を子宮の外へ排出するために子宮は少しですが収縮しますが、その時も筋腫があると強い痛みが起き、月経困難症のような症状を示します。過多月経がひどくなると生理のたびにふらふらしたりする貧血症状を示し、ひどい場合には輸血が必要なこともあります。漿膜下筋腫あるいは筋層内筋腫が大きくなると子宮のそばにある臓器、膀胱、直腸等に圧迫症状を与え、便秘、頻尿、あるいはお腹が張る、などの原因になります。

【筋腫の診断】

 子宮筋腫の診断は患者さまの年齢、あるいは過多月経等の症状よりある程度推察できますが、正確な筋腫の位置、数などはMRI,CTなどの画像診断により判断されます。超音波診断でも判断可能ですが行われますが、超音波診断の場合、超音波の届く範囲が限られていること、あるいは主治医の判断により結果が異なることがある等客観性にやや劣るといわれています。
筋腫は良性の腫瘍ですが、変性、あるいは血管が豊富な筋腫の場合、肉腫との区別が必要になります。子宮肉腫とは筋腫同様に子宮にできる腫瘍の一つで、非常に稀ですが、悪性のものです。肉腫と筋腫の区別は、MRI,あるいは超音波診断による腫瘍内血管の血流解析などにより行われますが、最終診断は筋腫あるいは肉腫と疑われる部分の組織を採取、病理学的診断によりなされます。

【筋腫の治療】

 過多月経による貧血、あるいは月経困難症に対しては造血剤投与、鎮痛剤投与などの対象療法がおこなわれますが、筋腫に対する直接的な効果はありません。筋腫に対する直接な治療には大きく分けて薬物良法(保存療法)と手術療法があります。

薬物療法(偽閉経療法)

 閉経前の女性では女性ホルモンの働きにより、下垂体ホルモン(FSH、LH)の分泌は抑制されています。ところが脳下垂体に直接作用させる「GnRHアゴニスト」という薬を患者さまに投与しますと、下垂体ホルモンの分泌が高度に高まります。その結果、女性ホルモン(卵胞ホルモン)の分泌が逆に抑制され、閉経後の女性のホルモン状態に陥り、人為的に閉経した様な状態になるため、偽閉経療法とも呼ばれています。
この治療により、卵胞ホルモンの分泌は極度に低化するため、生理は止まり、子宮筋腫による過多月経、生理痛等の症状も解消します。しかし、若い女性にとって、卵胞ホルモンの無い状態が長期間持続することは、逆に骨量が減少する、あるいは更年期障害のような症状が出現する等、悪い影響があるため、最長6カ月の使用とされ、それより長期間の使用は推奨されていません。
一部では、少量の卵胞ホルモンの投与を併用する、あるいはGnRHアゴニストの量を減らして、長期間使用することなどの試みが行われていますが、一般的ではありません。
GnRHアゴニストを使用したのちは、生理が再開、過多月経等の症状も再発するため、この偽閉経療法は閉経前後の女性あるいは手術を行う前の一時的な治療と考えられていることが多いようです。

手術療法

 手術療法が用いられるのは

  1. 過多月経等の症状が強い場合。 この場合、筋腫がそれほど大きくなくても症状が強ければ手術療法が選ばれます。
  2. 子宮筋腫を持っている不妊症の患者様で、不妊の原因がほかに見当たらない場合
  3. 過多月経等の症状は強くないが、筋腫が大きく、将来圧迫症状が出てくることが予測される場合

等ですが、子宮筋腫は基本的に良性腫瘍ですので、筋腫の症状、あるいは患者さまの希望を医師がよく理解したうえで、無治療という選択肢も含めた、種々の治療法の中から、最も相応しいものが選ばれます。
また、手術療法は、子宮をすべて摘出する子宮全摘術と筋腫だけを摘出、子宮は残す筋腫核出術に分けられます。

子宮全摘術
子宮全摘術
子宮を体部、頸部も含めてすべて摘出する方法で、お腹を臍の下から恥骨結合まで縦に切開する開腹縦切開、恥骨結合の上、3~5cmを横に切開する開腹横切開、腹腔鏡下に子宮を摘出する腹腔鏡下手術、膣より子宮を摘出する膣式手術があります。子宮全摘術は原則として、出産の予定の有無を問わず、子宮の温存を希望されない方に対して用いられる手術法です。摘出する子宮が大きい場合は開腹術が用いられ、小さい場合は膣式あるいは腹腔鏡下手術が用いられますが、子宮が大きくてもを細かく分割する方法で膣式、腹腔鏡下手術を行う場合もあります。

筋腫核出術
筋腫核出術
患者さまの年齢を問わず、子宮の温存を希望される方に対して用いられる方法で、過多月経等の原因となっている筋腫だけを摘出する方法です。筋腫核出の方法として、腹腔鏡下手術が用いられることが多いようですが、筋腫の直径が10cm大以上の巨大なもの、子宮頸部にある筋腫で腹腔鏡で摘出するのが困難な筋腫、あるいは筋腫が大腸などの隣接臓器に高度に癒着している場合などには開腹術による筋腫核出術が用いられます。

筋腫に対する内視鏡下手術

 子宮筋腫の治療法として、薬物により症状を軽くしたり、月経を止めて一時的に筋腫を縮小させる方法がありますが、

  • 症状が強い場合
  • 大きな筋腫
  • 筋腫が不妊症の原因となっている場合

には手術が必要になります。
筋腫に対して用いる内視鏡下手術として、腹腔鏡下に行うものと、子宮鏡下に行うものの2種類があります。

筋層内筋腫
腹腔鏡下筋腫核出術
おへその下に2cm程の傷をつけてそこから腹腔鏡というカメラをいれて筋腫をくりぬく手術を行っています。他に2~3箇所の1cmほどの小さな傷から、電気メスやはさみなどを入れて筋腫をくりぬきます。筋腫のくりぬきから子宮の縫合まですべて腹腔内で行います。くりぬいた筋腫はモルセレーターという特殊な機械でリンゴの皮をむく様に細く削りながら1cmの傷から体外へ取り出します。筋腫だけをくりぬき正常な子宮は残りますから、その後の妊娠も可能です。7cmくらいまでの大きさの筋腫ならこの方法で手術が可能です。

腹腔鏡手術
腹腔鏡下手術のメリット 腹腔鏡下手術のデメリット
  • 傷口が小さい
  • 患者様が楽
  • 退院が早い
  • 術後の癒着が少ない
  • 医師の熟練が必要
  • 開腹手術へ移行する場合がある
  • 隣接臓器である尿管や直腸の損傷の可能性(子宮内膜症などで高度な癒着がある場合)
腹腔鏡補助下筋腫核出術
筋腫が大きく、7cmから10cmくらいまでの筋腫に対して行われる手術です。上記の手術の傷にさらに、2~3 cmの傷を加えてその傷から筋腫をくりぬきます。筋腫をくりぬいた後の子宮の縫合もその傷から行うことが可能です。腹腔鏡下手術は、手術後4日くらいで退院が可能です。退院後も傷が小さいため、退院後数日で日常生活に戻ることが可能です。

筋層内筋腫
子宮鏡下筋腫切除術
子宮の内側に飛び出した筋腫を粘膜下筋腫とよびますが、この粘膜下筋腫は子宮鏡という内視鏡を膣の方から子宮内に挿入して筋腫を削り取る手術が可能です。この手術はお腹はもちろんどこにも傷をつけずに手術が可能です。ただし、子宮の筋肉の中にできている筋腫には行うことができません。粘膜下筋腫でも5~6cm以上になると、一回では取りきれず数回にわけて切除が必要になることがあります。
子宮鏡下手術は、手術の翌日には退院が可能です。退院後数日で日常生活に戻ることが可能です。
筋腫の大きさが10cmを超えるようなものや、数が多いものは内視鏡での手術が難しいため、お腹を切る手術(開腹手術)が行われます。開腹手術の場合には、術後8~9日間の入院が必要になり、退院後も日常生活に戻るまでには1~2週間を要します。

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