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 緑内障の診療ガイドラインとしては、日本眼科学会が2003年に発表したものがあります。ここではその概略を解説します。
全文は日本眼科学会ホームページに公開されています。

第1章 緑内障の定義

緑内障緑内障は、視神経乳頭視野の特徴的変化の少なくとも一つを有し、通常『眼圧を十分に下降させることにより、視神経障害の改善あるいは進行を阻止しうる疾患』とされています。

通常、角膜の後ろの毛様体で作られる房水は、虹彩の前に出てきて隅角に排水されますが、緑内障では、この排水が目詰りなどで順調に行かず、眼圧が高まるなどして視神経乳頭(盲点)の陥没等が起り、次第に視野が狭まります。

緑内障による視野の狭まり
【緑内障による視野の狭まり】

第2章 緑内障の分類

虹彩(茶目)の周りには隅角といって目の中の水を外に排水する出口があり、そこが広いか狭いかで緑内障は分類されます。

A. 原発緑内障
特に原因や誘因なく発症した緑内障です。
  1. 原発開放隅角緑内障
    隅角が広く開放されている緑内障。眼圧が正常な正常眼圧緑内障、高眼圧はあるが視神経症と視野異常を欠く高眼圧症もこれに含まれます。
  2. 原発閉塞隅角緑内障
    隅角が狭く閉塞している緑内障。
  3. 混合型緑内障
原発解放隅角 原発閉塞隅角
B. 続発緑内障
全身疾患、薬物、他の眼疾患が原因となって眼圧が上昇した緑内障です。
C. 発達緑内障
隅角形成異常による緑内障で、先天的な緑内障も含まれます。

第3章 緑内障の検査

緑内障の検査では眼圧、隅角、眼底、視野が重要です。この他、問診、細隙灯顕微鏡検査も必要です。

1)眼圧検査
正常眼圧の平均値(±標準偏差)は15.5±2.6mmHg前後で、上限値は21mmHgとされていましたが、これらは欧米人の調査結果に基づいており、日本人の眼圧はこれより1~2mmHg程度低いと言われています。
眼圧には季節変動や日内変動があり、朝方や冬季の方が高くなります。
2)隅角検査
隅角鏡というコンタクトレンズを、角膜にあてて観察します。
隅角の広さによって4-5段階に分類されます。
3)眼底検査
眼底検査ではまず、視神経乳頭所見が重要です。緑内障では乳頭内の陥凹が大きく深くなります。 乳頭径と陥凹の比が0.7以上の人は人口の1-5%のみであり、緑内障の可能性があります。
視神経乳頭出血、視神経周囲の網脈絡膜萎縮、網膜神経線維層欠損も緑内障を疑わせる異常所見です。
4)視野検査
正常視野は楕円形で中心よりやや耳側に盲点があります。
初期緑内障では盲点の周囲に弓型の暗点が出現し鼻側の感度が低下します。
末期には中心のみ残存する場合や耳側のみ残存する場合があります。
視野検査と眼底検査によって緑内障の重症度や進行の度合いが判定されます。視野検査法はGoldmann視野計による動的視野検査、Humphrey視野計やOctopus視野計などによる静的視野検査などが行われます。静的視野検査の方が鋭敏で定量的です。

第4章 緑内障の治療総論

緑内障の各病型には明確な病期分類や重症度分類がなく、それぞれに対する標準的治療はガイドラインでは示されていません。ここでは治療総論が述べられています。

A. 緑内障治療の原則
治療の目的は患者さんの視機能維持であり、現時点で言えるもっとも確実な治療法は眼圧下降であるとしています。
● 隅角閉塞やぶどう膜炎などのような治療できる原因があれば原因治療を行います。
いったん障害された視機能が回復することはないため、早期発見早期治療が大切です。
● 薬物治療の原則は必要最小限の薬剤で最大の効果を得るようにすることです。
症例や病型・病期に応じて薬物、レーザー手術、観血的手術から治療を選択します。
B. 治療の実際
無治療の状態の眼圧、眼底、視野などのデータの把握をまず行います。

【治療目標となる眼圧の設定】
無治療眼圧レベル、緑内障病期、患者年齢・余命、他眼の状況、家族歴、その他の危険因子などから設定します。
病期別の設定例としては、初期例19mmHg以下、中期例16mmHg以下、後期例14mmHg以下という数字が提唱されています。
正常眼圧緑内障では無治療眼圧より30%の眼圧下降が目標値として言われています。
目標眼圧は経過をみながら修正されます。

【治療は十分な協力態勢で】
緑内障は視機能のみならず生活の質に影響を与えるので、患者さんと十分話し合いながら治療の継続や中止を検討しなければいけません。相談すべき項目としては、治療の副作用、経済的負担、時間的負担などです。慢性疾患なので治療には患者さんの協力が不可欠で、点眼や通院が医師の指示とおりに行われること(これをコンプライアンスと言います)が重要です。
C. 緑内障治療薬
  1. 症状に合わせて使用 緑内障治療薬の分類
    交感神経刺激薬、交感神経遮断薬、副交感神経刺激薬、プロスタグランジン関連薬、炭酸脱水素阻害薬、高張浸透圧薬があります。
  2. 薬剤の選択
    交感神経遮断薬のβ遮断薬が長年第一選択薬でしたが、近年はプロスタグランジン関連薬も第一選択として使用されます。
    副作用などでこれらが不適当な場合は他の点眼薬も第一選択で使用されます。単剤で効果が不十分なときは複数の薬剤で併用療法を行います。
  3. 薬物療法の注意点
    薬物の効果には個人差があり、眼圧には日日変動や日内変動があるので、できればまず片眼のみ投与して効果や副作用を確認後両眼に使用開始するのが望ましいとされています。
    長期に使用するため、正しい点眼法を指導することも重要です。点眼前に手を洗う、まつ毛に点眼瓶が触れない、一回一滴、複数の点眼を使用するときは5分以上あける、といったことです。
D.レーザー手術
  1. レーザー虹彩切開術
    瞳孔ブロック(瞳孔を通る房水の水路が遮断されているために房水が隅角から排水されず眼圧が上がる)による閉塞隅角緑内障に対し行われます。コンタクトレンズをあて、アルゴンレーザーまたはヤグレーザーを使用します。
  2. レーザー線維柱帯形成術
    隅角にあるスポンジ状の房水の流出口(線維柱帯)にレーザーをあてて、流れを良くします。コンタクトレンズをあてて、アルゴンレーザーを照射します。
  3. レーザー隅角形成術
    (レーザー周辺部虹彩形成術)

    周辺部虹彩にアルゴンレーザーを照射して隅角を広げる手術です。
  4. 毛様体光凝固術
    房水を作り分泌する毛様体をレーザーにより破壊し、眼圧を下げる手術です。ダイオードレーザーを使います。眼外と眼内から照射する方法があります。
  5. レーザー切糸術
    線維柱帯切除術後、縫った糸を切断してろ過量を増加させて眼圧下降量を増加させる手術です。
E. 観血的手術
 観血的手術の適応は、薬物治療やレーザー治療など他の治療法によっても十分な眼圧下降がえられない症例、副作用やコンプライアンス不良などによって他の治療法が適切に行えない症例、他の治療では十分な眼圧下降が得られないと考えられる症例です。ろ過手術である線維柱帯切除術が主に行われ、症例によって他の術式が検討されます。
1) 線維柱帯切除術(トラベクレクトミー)
最も一般的な緑内障手術。白目の組織である強膜を弁状に切開して流水路をつくり房水を眼外へ流出させ眼圧を下降させます。ろ過部位の瘢痕化による閉塞を抑えるために代謝拮抗剤が併用されるようになり成績が向上しました。
2) 非穿孔性線維柱帯切除術
眼の内外を完全に交通させず、薄い膜を残す線維柱帯切除術。新しい術式なので効果や副作用が十分検討されていません。
3) セトン手術
専用インプラントを用いて房水流出路を作る術式で、重症例に行われます。
4) 線維柱帯切開術
隅角にもともとある流出路の柵状構造を切開して流水量を増やす術式。
5) 隅角癒着解離術
閉塞隅角緑内障眼の隅角癒着を切り離す術式。
6) 隅角切開術
主に発達緑内障眼に対し、隅角を切開する術式。
7) 周辺虹彩切除術
レーザー虹彩切開が普及し、行われることはまれになりました。
8) 毛様体破壊術
冷凍凝固装置やジアテルミーを用いて毛様体を破壊する術式。
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