特定非営利活動法人 標準医療情報センター

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【膵臓とは】

膵臓は胃の後ろに隠れるように位置していて、長さは約15cmで重さは約100~120g程度の小さな臓器です。膵臓は1日に1~1.5Lの消化液を十二指腸に分泌し、血糖調節をするホルモン(インスリンなど)を血液に放出します。膵臓の役割は、摂取した栄養素(炭水化物、蛋白質、脂肪)を腸が吸収しやすい形まで消化することです。

【膵癌とは】

膵臓癌の大部分は、膵液を流れ道である膵管の上皮細胞から発生する膵癌です。他にホルモン産生細胞由来の癌もありますが数は少ないです。膵癌患者数は年々増加しており、2009年の膵癌死亡数は約26,800人で、男性で5位、女性では4位です。膵癌は進行癌で発見されることが多く、死亡率と罹患率が同程度であることから治りにくい癌の1つと言われています。

【膵癌の危険因子】 膵癌診療ガイドライン(2009年改訂版 日本膵臓学会)から

膵癌にはいくつかの危険因子(なりやすさ)が知られています。表に危険因子と危険率を示します。家族に膵癌患者がいる、糖尿病・肥満・慢性膵炎・膵管内乳頭粘液性腫瘍(嚢胞腫瘍)などの合併疾患がある、喫煙習慣があるといった場合には膵癌発症率が高いことが知られています。とくに糖尿病は発症して2年以内が膵癌発症の危険率が高いと言われています。

表 膵癌発症の危険因子と危険率
(膵癌診療ガイドライン2009年版より、一部改変)
家族歴 膵癌 13倍
合併疾患 糖尿病 1.8~2.1倍
肥満 BMI 30以上では1.8倍
慢性膵炎 4~8倍
膵管内乳頭粘液性腫瘍 0.95~1.1%/年
嗜好 喫煙 2~3倍

【膵癌の症状】

多くの場合に腹痛、腰や背中の痛み、黄疸などがみられます。このような症状が続く場合は医療機関の受診を勧めます。しかし、膵癌は特徴的な症状に乏しく症状から膵癌を早期に発見することは困難で、膵癌と診断されたときに無症状の患者さんもいます。

【膵癌の診断】

1)血液検査
アミラーゼ、リパーゼ、エラスターゼ1などの血中膵酵素に加えて、腫瘍マーカーであるCA19-9、Dupan-2、CEAなどが測定されます。腫瘍マーカーは進行した膵癌では高値となりますが、早期では異常値を示さないことが多く早期発見には有用ではありません。術後の再発や治療の効果判定に腫瘍マーカーの変動は有用です。
2)腹部超音波検査
超音波検査は膵臓疾患をサーベイするのに良い検査法ですが、膵腫瘍が小さい場合や腫瘍が膵尾部にある場合には腫瘍を確認できないことがあります。膵癌の間接所見として主膵管の拡張や嚢胞がみられた場合には、CTによる精密検査を要します。
膵癌の造影CT写真

(膵体部に造影効果の薄い腫瘍が確認できます)

3)腹部CT検査
腹部CT検査は膵癌の質的診断、進展度診断にたいへん有用です。ただし、膵癌診断には造影剤を静脈注射してCT検査を行う造影CT検査が必須です。
実際の腹部造影CT写真を示します。造影CT検査により膵癌の部位と大きさ、リンパ節や肝転移の有無、周囲の重要血管や後腹膜への浸潤の有無を診断し、進展度(ステージ)が決定され治療法が選択されていきます。
4)超音波内視鏡検査(EUS)
超音波内視鏡(EUS)は内視鏡先端の超音波装置により、胃や十二指腸の壁をとおして膵臓を観察します。膵腫瘍の質的診断がつかない場合にEUSによる腫瘍生検(胃壁をとおして膵腫瘍に針を刺し組織を採取する検査法)を行うこともあります。
5)内視鏡的逆行性膵管造影検査(ERP)
内視鏡的逆行性膵管造影検査は、内視鏡を十二指腸に挿入して膵管の出口(乳頭)から造影剤を膵管内に注入しX線撮影します。膵癌によって生じる膵管の狭窄や閉塞、嚢胞などを診断します。膵管内の膵液を採取して癌細胞が含まれているかどうかを検査(細胞診)することもあります。

【膵癌の治療法】

膵癌の唯一の根治的治療は外科手術による切除です。しかし、手術可能な膵癌患者数よりも、膵癌が進展し切除不能な患者数のほうが多いのが現状です。

1)外科手術
肝臓への転移がなく、大血管(上腸管脈動脈、腹腔動脈など)への浸潤がない場合に手術適応となります。膵癌のある部位により膵頭十二指腸切除術、膵体尾部切除、ときに膵全摘術が選択されます。術後の再発予防のために、膵癌の進展度によってはジェムザールによる術後補助療法が行われます。
2)化学療法
切除不能の膵癌では全身化学療法が行われます。ジェムザールとTS-1が標準治療薬となっており、保険適応となっています。
化学療法を行う上で重要な条件があります。全身状態が良好であること、肝機能や腎機能が良好であること、白血球数が2000以上であること、肺病変(間質性肺炎や肺繊維症)がないこと、重要な感染症がないことなどです。
ジェムザールは点滴での静脈注射を週1回行い、3週連続して4週目は休薬します。TS-1は1日2回の内服投与で、4週間連日服用し2週間休薬します。いずれも、これを1コースとして繰り返します。ジェムザールとTS-1の組合わせ投与も行われる場合もある。
最近、タルセバがジェムザールとの併用療法で保険承認されましたが、副作用である間質性肺炎の頻度が高く、化学療法に習熟した医師の元での治療が原則です。
3)化学放射線療法
明らかな遠隔転移がない切除不能の進行膵癌に対して、化学療法に放射線照射を組合わせた化学放射線療法も有効な治療法の1つです。
4)緩和医療
進行膵癌では腹痛や後腹膜浸潤による腰背部痛がみられるので、疼痛コントロールを化学療法とともに開始します。第一選択薬にNSAIDs(非ステロイド抗炎症薬)やアセトアミノフェンが用いられ、鎮痛効果が不十分なら弱オピオイドを追加し、さらに強オピオイドと変更していきます。
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