特定非営利活動法人 標準医療情報センター


  • 病気の標準治療法解説 疾患一覧へ
  • 診療ガイドラインとは
  • この病気について(症状・検査など)

1 脳腫瘍とは

表1 主な脳腫瘍 脳腫瘍は、頭蓋内(つまり頭蓋骨の内側です)に発生する腫瘍(新生物、いわゆるできもの)のことです。脳そのものだけでなく、脳を包む膜(髄膜)や脳に出入りする神経など、脳の様々な部分に発生する腫瘍をすべて含めて脳腫瘍と呼びます。脳腫瘍の種類は非常に多く、100種類以上ありますが、ここでは日常よくみられる代表的な脳腫瘍について治療方法を述べていきたいと思います。

 脳実質の外に発生するほとんどの脳腫瘍は、発育速度が遅く、手術で全て摘出できる場合も多く、生物学的にも臨床的にも良性の経過をとります。髄膜腫(ずいまくしゅ)、下垂体腺腫(かすいたいせんしゅ)、神経鞘腫(しんけいしょうしゅ)、頭蓋咽頭腫(ずがいいんとうしゅ)などがこうした良性腫瘍に含まれます。
  一方、脳の実質内に発生する腫瘍の多くは発育するスピードも早く、周りの脳に浸潤する(腫瘍細胞がしみ込むように発育すること)ため、手術によって全て摘出することが困難です。生物学的にも臨床的にも悪性の経過をとる腫瘍です。多くの神経膠腫(しんけいこうしゅ:グリオーマ)、中枢神経原発悪性リンパ腫胚細胞性腫瘍転移性脳腫瘍(癌の脳転移)などが悪性腫瘍に含まれます。


2.治療方法その1:手術の一般論

画像データ
ストライカー社製ナビゲーションシステム 図1 脳神経外科手術ナビゲーションシステム

上図のように、あらかじMRIやCTのデータを取り込んでおくと、手術中に病変部に対するアプローチ方向や現在手術操作を行っている部位がどこか表示することができる。

 脳実質外に発生する良性腫瘍と脳実質内に発生する悪性腫瘍では、治療の方針が異なってきます。従いまして、治療の方針の決定には、どのような脳腫瘍であるかを調べなくてはなりません。脳腫瘍の診断は、手術で摘出した腫瘍組織を顕微鏡で調べる“病理組織診断”に基づいて最終的に決定されます。病理組織診断によって初めて脳腫瘍としての診断名が確定し、その後の治療方針を決めることができるのです。病理組織診断を目的として手術を行うことも、腫瘍を可及的に切除することと病理組織診断を共に目的として手術を行うこともあります。

 組織診断を目的とした手術を「生検術」といいますが、これは開頭して行う場合と、コンピューターで計算した経路で定位的に採取する場合があり、病変の部位や性質に応じて最適な方法がとられます。最近では手術ナビゲーションシステムが開発され、これらの手術が一層安全に行えるようになりました(図1)。このナビゲーションシステムを導入している病院は近年増えてきています。


トラクトグラフィー
図2 トラクトグラフィー

MRIで神経線維の走行を猫出することができ、これにより病変部と重要な神経線維との位置関係を把握することができる。

 切除が可能な部位にできた腫瘍の場合、安全に摘出できる範囲で腫瘍の切除を行います。トラクトグラフィーといわれる神経線維の走行の画像診断(MRIを用いて神経線維の走行を描き、病変部との位置関係を把握します)(図2)、前述のナビゲーションシステム、様々な手術中の電気生理学的モニタリング(図3)、術中超音波診断装置などを用い、可能な限り安全な手術を行います。また、蛍光物質(5-ALA)により手術中に腫瘍細胞と正常脳を見分けたりします。手術中に患者の意識をさまし、脳機能を実際に確認しながら切除範囲を決める方法(覚醒下手術、awake surgery)を行うこともあります。

ニコレ社製モニタリング装置 運動誘発電位のモニタリング


図3 神経機能のモニタリング


右図は運動誘発電位であり、これにより手術中に手足の麻痺を生じていないか、持続的にモニターすることができる。

3.治療方法その2:放射線治療

 悪性脳腫瘍の術後に化学療法(抗がん剤による治療)と併用して行われるのが一般的です。良性腫瘍でも、再発をきたした場合や一部に悪性度の高い部分がみられる場合には、放射線治療を行うことがあります。放射線治療は、正常脳にも放射線がかかるため、線量(どれだけ多く放射線をかけられるか)に限界があります。また最大線量を照射した場合には1回しか照射できません。このような放射線治療は通常外照射(頭の外から放射線をかける方法)で行われます。放射線治療装置は多くの病院に普及しており、病変部に可能な限り多くの線量をかけ、正常脳の線量を少なくする工夫がなされています。1日に2グレイという線量で25日から30日にわたって照射を行うことが一般的ですが、疾患によって異なります。

 一方、最近、ガンマナイフという新しい放射線治療装置が開発されました。これは病変部に1回で大量の放射線を照射する装置です。転移性脳腫瘍、聴神経腫瘍、再発した脳腫瘍(髄膜腫、下垂体腫瘍)などに用いられます。ただし、病変の大きさが3cm以下であること、視神経などと十分に離れていることなどの制限があります。また、このガンマナイフは、高価なものであり、一部の病院にしか備えられておらず、多くの病院ではガンマナイフを備えた近隣の病院と提携して治療を行っています。
このガンマナイフに類似したものとして、サイバーナイフという新しい放射線治療装置も開発されています。

4.治療方法その3:化学療法(抗がん剤治療)

 一般に悪性脳腫瘍の術後に、放射線治療と併用して行う場合と、化学療法単独で行う場合があります。個別の治療スケジュールについては、あとで詳しく解説します。また、外来で、維持化学療法を行うこともあります。

(2013.9.24更新)

ページトップへ