特定非営利活動法人 標準医療情報センター

先端医療検査(脳MR検査)

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1 パーキンソン病とは

 パーキンソン病は60~70歳に多い神経変性疾患です。初発症状は安静時振戦といわれる手の震えや、小また歩行などからだの動きが遅く鈍くなるのが特徴的です。パーキンソン病の診断の要点は(1)安静時振戦、固縮、無動、姿勢反射障害のうち少なくとも2つが存在すること、(2)頭部CTまたはMRI所見に原則として明らかな異常を認めないこと、(3)感染、薬物などによるパーキンソン症候群を除外できること、(4)L-ドーパまたはドパミンアゴニストにて明らかな症状の改善を認めることの4点です。原因は中脳の黒質線条体という部分の異常で、ドーパミンという物質が不足して起こります。ですから脳にドーパミンを補充することができるL-ドーパという薬を使う薬物治療が基本となります。症状や原因など分かりにくいですが、このガイドラインは治療法のガイドラインですので診断や病気の説明には余り触れていません。病気の知識を見てください。図入りで説明してあります。

2 ガイドラインの内容

ヤールの重症度分類
 治療方針を立てるとき、公費負担の申請をするときに必要な分類です。
 ヤールの分類で3度以上になると、医療費の補助が受けられます。
1度 症状が片方の手足のみの状態で日常生活への影響はまだ極めて軽微。
2度 症状が両方の手足にみられるが、まだ障害は軽く、日常生活は多少の不自由はあっても従来通り可能であり、歩行障害はないかあっても軽微である。
3度 症状が両方の手足にみられ、典型的な前屈姿勢、小刻み歩行がみられる。
日常生活は自立しているが、職種の変更などかなりの制約をうけている。
4度 両方の手足に強い症状があり、歩行は自力では不可能であるが、支えてもらえば可能である。日常生活でもかなりの介助を要する。
5度 ベッドまたは車椅子の生活で、ほとんど寝たきり。全面的介助を要する。

 このガイドラインではパーキンソン病を早期パーキンソン病と進行期パーキンソン病に分けています。早期パーキンソン病はまだL-ドーパ治療を始めていない比較的軽度の(ヤールのステージのIII以下)パーキンン病患者です。進行期パーキンソン病はL-ドーパを既に使用していて、更に治療上問題が起きている患者を指します。パーキンソン病ではL-ドーパが早期に効果があっても長く使っていると効きが悪くなったり、症状の日内変動(wearing off現象)が起こったり、急に動けなくなるオンオフ現象や勝手に手足が動いてしまうジスキネジア呼ばれる症状が出ることがあります。L-ドーパ開始から5年で50%以上の患者が日内変動に悩む状態になるといわれています。また長期間追跡していくと60%にうつ状態、40%に痴呆症状が見られます。進行期パーキンソン病の治療はこのような多彩な症状にどう対応するかが問題となります。
 本ガイドラインでは多彩な症状に対して多くの薬物の評価を記載していますが、ここでは最も一般的な症状と治療法についてのみ抜粋して記載します。またこのガイドラインでは重症度の判定にヤールの分類を用いていますので掲載しておきます(右表)


3 早期パーキンソン病の治療ガイドライン

 未治療のパーキンソン病の場合早めにL-ドーパを使うと早く日内変動やジスキネジアが起こってきて、患者のQOLを悪化させます。それを防ぐために薬物開始時期をできるだけ遅くすること特にL-ドーパの開始時期をできるだけ遅らせるようにしています。
 L-ドーパの代わりにまずドパミンアゴニストというドーパミンそのものに近い種類の薬を使います。それによりQOL悪化の原因となる症状発現を少なくできます(レベルIb)。この場合のL-ドーパは単剤ではなく、L-ドーパと末梢性ドーパ脱炭酸酵素阻害薬配合剤(DCI)の合剤が推奨されています。合剤を使用することにより、L-ドーパ使用量を少なくすることができ、将来の日内変動やジスキネジア等の発現を遅らせることができるからです。
図1 早期パーキンソン病の治療ガイドライン

 ただし、治療開始年齢が70歳以上の場合は将来日内変動やジスキネジアを起こす確率が低いことが分かっていて(6%以下)、その観点から70歳以上の未治療の患者には最初からL-ドーパ含有合剤を使用したほうが良いとされています。また知的機能低下を示している例ではドパミンアゴニストが幻覚や錯乱を起こしやすいとされていて、最初からL-ドーパ含有合剤を使用したほうが良いとされます。以上をまとめたフローチャートを図1に示します。 このフローチャートの使用の注意点の一部を記載します。若い人であればあるほど、できるだけL-ドーパの使用開始時期を遅らせるほうが良いと考えられています。


  1. 改善が不充分と判断するには、副作用がない限りドパミンアゴニストであれば最高維持量まで、L-ドーパであれば600mg(DCI併用)まで使用することが原則です。
  2. ドパミンアゴニストを使用する際は嘔吐を抑えるドンペリドン30mgの併用を勧めます。
  3. 若年者の場合、抗コリン薬あるいは塩酸アマンタジンで数年間の治療が可能であれば、L-ドーパ開始を遅らせることができます。これらの薬物で不十分な場合は、上記の図に従って、ドパミンアゴニストを追加し、最後にL-ドーパを追加します。

4 進行期パーキンソン病の治療ガイドライン

図2 wearing off現象・on-off現象のある場合の治療法

既にL-ドーパを十分使用していて、日内変動やon-off 現象、ジスキネジア等の諸問題が起こってしまっている症例に対する治療です。症状が多彩で、それぞれに対して治療法が違いますが、大まかな流れを図2に示します。日内変動やon-off 現象が問題でジスキネジアがなければMAO阻害剤(セレギノン)という薬剤を追加すると改善します(レベルIb)。ジスキネジアのみの場合はL-ドーパの減量、少量を頻回に使用するなどL-ドーパの使用法を変えます。それでもだめなときには塩酸アマンタジン(薬品名シンメトレル)を追加します。
L-ドーパの消化管からの吸収が悪くなりL-ドーパの効果が中々現れなくなるdelayed-on現象というものもあります。この場合はL-ドーパを食前に飲んだり、水やレモン水に溶かして飲んだりすると有効です。
 他にすくみ足、自律神経症状、幻覚、妄想、うつ状態、痴呆などの症状を合併しますが、それぞれ対症的療法を行います。
 これらの薬物療法を行っても進行するパーキンソン病の症状に対して外科的治療法が試みられています。胎児黒質細胞移植や交感神経節移植も行われていますが症例数が少なく未だ判定保留です。一方定位脳手術といって頭蓋骨に小さな穴を開け、その穴から電極を刺して、脳の奥にある視床や淡蒼球という部分を破壊したり、電極で刺激したりする方法があります。これは1950年ごろから行われていて、日本でも2000年4月に保険適応認可されています。現在多く行われているのは淡蒼球や視床下核に電極を埋め込んでおいて電気刺激をする脳深部刺激療法といわれるものです。パーキンソン病の症状のうち振戦やジスキネジア、日内変動やon-off 現象に有効といわれていますが、姿勢反射障害やすくみ足への有効性は証明されていません。また手術をすれば薬物が完全に必要なくなるというものではなく、L-ドーパの量を減らせるというレベルのものです。いずれにしろ外科療法は,施設の経験,専門的意見,患者の状態を総合的に判断して決める必要があります。別にガンマナイフを用いて放射線のビームを集中的にあてて組織を破壊する方法も開発されていますが、これから評価されるデータが出てくるものと考えます。

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