パーキンソン病│特定非営利活動法人 標準医療情報センター


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 2002年に日本神経学会が監修し、『パーキンソン病治療ガイドライン2002』が作成され、本稿を記載した。その後、治療の進歩から『パーキンソン病治療ガイドライン2011』が発行され、その改訂版として『パーキンソン病診療ガイドライン2018』が発行された。治療のみならず診断基準や病因、遺伝子、画像所見など幅広く解説しており、治療ガイドラインから診療ガイドラインへ名称が変更されている。本稿は『パーキンソン病診療ガイドライン2018』の抜粋である。

1. パーキンソン病とは

 パーキンソン病は黒質のドパミン神経細胞が比較的選択的に障害されることで発症し、運動緩慢(かんまん)、振戦(しんせん)、筋強剛(きんきょうごう)を中心とした運動症状が前景となる神経変性疾患である。運動症状のみならず、多彩な自律神経症状、うつ症状、睡眠障害に伴うさまざまな症状、認知症などの非運動症状も高頻度に合併する。
 発症原因は不明であるが、遺伝子因子並びに環境因子の関与が重要であることが知られている。本邦での有病率は100〜180人/10万人とされているが、加齢も発症に寄与していることから、今後の患者増が予想される。
 現在、パーキンソン病の進行を抑制する神経保護治療はなく、対症療法が中心である。L-ドパ、ドパミンアゴニストを中心とする薬物療法、脳深部刺激療法を中心とする手術療法、カウンセリング、リハビリテーションなどの非薬物療法など多くの選択肢が存在するため、治療の選択肢は複雑化しており、しばしば複数の治療法を組み合わせることが不可欠になっている。

2. パーキンソン病の診断と発症因子

(1) 診断基準

 パーキンソン病を確実に診断できる検査法は現時点では確立していないため、臨床診断はもっぱら症状に基づいて行われている。2015年にInternational Parkinson and Movement Disorder Society (MDS) から新しい診断基準が提唱されている(表1)。

表1 International Parkinson and Movement Disorder Society( MDS) 診断基準(2015)

臨床的に確実なパーキンソン病(clinically established Parkinson’s disease)

パーキンソニズムが存在しさらに、

  1. 絶対的除外基準に抵触しない。
  2. 少なくとも2つの支持的基準に合致する。
  3. 相対的除外基準に抵触しない。

臨床的にほぼ確実なパーキンソン病(clinically probable Parkinson’s disease)

パーキンソニズムが存在しさらに、

  1. 絶対的除外基準に抵触しない。
  2. 相対的除外基準と同数以上の支持的基準がみられる。ただし2つを超える相対的除外基準がみられてはならない。

支持的基準(supportive criteria)

  1. 明白で劇的なドパミン補充療法に対する反応性がみられる。この場合、初期治療の段階では正常かそれに近いレベルまでの改善がみられる必要がある。もし初期治療に対する反応性が評価できない場合は以下のいずれかで判断する。
     ● 用量の増減により顕著な症状の変動(UPDRS part Ⅲでのスコアが30% を超える)がみられる、または患者または介護者より治療により顕著な改善がみられたことが確認できる。
     ● 明らかに顕著なオン/オフ現象がみられる。
  2. L-ドパ誘発性のジスキネジアがみられる。
  3. 四肢の静止時振戦が診察上確認できる。
  4. 他のパーキンソニズムを示す疾患との鑑別診断上、80% を超える特異度を示す検査法が陽性である。現在この基準を満たす検査として以下の2つが挙げられる。
     ● 嗅覚喪失または年齢・性を考慮したうえで明らかな嗅覚低下の存在
     ● MIBG 心筋シンチグラフィによる心筋交感神経系の脱神経所見

絶対的除外基準(absolute exclusion criteria)

  1. 小脳症状がみられる。
  2. 下方への核上性眼球運動障害がみられる。
  3. 発症5 年以内に前頭側頭型認知症や原発性進行性失語症の診断基準を満たす症状がみられる。
  4. 下肢に限局したパーキンソニズムが3 年を超えてみられる。
  5. 薬剤性パーキンソニズムとして矛盾のないドパミン遮断薬の使用歴がある。
  6. 中等度以上の重症度にもかかわらず、高用量(>600 mg)のL-ドパによる症状の改善がみられない。
  7. 明らかな皮質性感覚障害、肢節観念運動失行や進行性失語がみられる。
  8. シナプス前性のドパミン系が機能画像検査により正常と評価される。
  9. パーキンソニズムをきたす可能性のある他疾患の可能性が高いと考えられる。

相対的除外基準(red flags)

  1. 5年以内に車椅子利用となるような急速な歩行障害の進展がみられる。
  2. 5年以上の経過で運動症状の増悪がみられない。
  3. 発症5年以内に重度の構音障害や嚥下障害などの球症状がみられる。
  4. 日中または夜間の吸気性喘鳴や頻繁に生じる深い吸気(*1)など、吸気性の呼吸障害がみられる。
  5. 発症から5年以内に以下のような重度の自律神経障害がみられる。
     ● 起立性低血圧:立位3分以内に少なくとも収縮期で30mmHg または拡張期で15 mmHg の血圧低下がみられる。
     ● 発症から5年以内に重度の尿失禁や尿閉がみられる。
  6. 年間1 回を超える頻度で繰り返す発症3年以内の転倒。
  7. 発症から10年以内に、顕著な首下がり(anterocollis)や手足の関節拘縮がみられる。
  8. 5年の罹病期間のなかで以下のようなよくみられる非運動症状を認めない。
     ● 睡眠障害:睡眠の維持障害による不眠、日中の過剰な傾眠、レム睡眠行動障害の症状
     ● 自律神経障害:便秘、日中の頻尿、症状を伴う起立性低血圧
     ● 嗅覚障害
     ● 精神症状:うつ状態、不安、幻覚
  9. 他では説明のできない錐体路症状がみられる。
  10. 経過中一貫して左右対称性のパーキンソニズムがみられる。
〔Postuma RB, Berg D, Stern M, et al. MDS clinical diagnostic criteria for Parkinson’s disease. Mov Disord. 2015;30(12):1591-1601.〕
(*1):inspiratory sighs. 多系統萎縮症で時にみられる呼吸障害の1つで、しばしば突然不規則に生じる深いため息様の吸気。

(2) 画像診断

①MRIはパーキンソン病の診断に有用か
回答:現時点ではパーキンソン病を直接支持する異常所見を画像化するには必ずしも十分ではないが、鑑別疾患の除外のためには有用である。
②MIBG心筋シンチグラフィはパーキンソン病の診断に有用か
回答:パーキンソン病と、その他のパーキンソン症候群を鑑別する際の感度、特異度はともに80%以上であり、鑑別診断上有用である。
③ドパミントランスポーター(DAT)シンチグラフィはパーキンソン病の診断に有用か
回答:パーキンソン病と、本態性振戦や黒質線条体系の編成を伴わないパーキンソン症候群との鑑別に有用である。

(3) パーキンソン病と遺伝子

 パーキンソン病のほとんどは孤発性であるが、5〜10%は家族内発症者が存在する遺伝性パーキンソン病が存在する。

(4) パーキンソン病と環境因子

 パーキンソン病の有病率は高齢になるほど高く、80歳以降がピークである。有病率はアフリカやアジア・アラブに比して欧州や北米・南米で高く、人種別ではヒスパニック系、非ヒスパニック系白人、アジア人、黒人の順に高い。また世界的には男性に多いが、アジアでは男女差が少ない。

3. 早期パーキンソン病の治療

(1) 早期パーキンソン病の治療はどのように行うべきか

 エビデンスをもとに日本神経学会のガイドライン作成委員会、パネル委員会において治療アルゴリズムを作成した(図1)。

図1 早期パーキンソン病治療のアルゴリズム

(*1):背景,仕事,患者の希望などを考慮してよく話し合う必要がある (*2):認知症の合併など (*3):症状が重い( 例えばホーン―ヤールHoehn ―Yahr 重症度分類で3 度以上),転倒リスクが高い,患者にとって症状改善の必要度が高い,など (*4):65 歳未満の発症など

(2) 参考:Hoen-Yahr(ホーン‐ヤール)の重症度分類

 パーキンソン病はその進行度によって、症状や障害の程度がかなり変化する疾患である。重症度ごとに当然リハビリテーションのアプローチの方法も異なるため、診断からホーン‐ヤール重症度分類5度までの治療目標と介入方法を選択・設定することが必要である。

〈1度〉
 症状が片方の手足のみの状態で、日常生活への影響はまだ極めて軽微。
〈2度〉
 症状が両方の手足にみられるが、まだ障害は軽く、日常生活は多少の不自由はあっても従来通り可能であり、歩行障害はないかあっても軽微である。
〈3度〉
 症状が両方の手足にみられ、典型的な前屈姿勢、小刻み歩行がみられる。日常生活は自立しているが、職種の変更などかなりの制約をうけている。
〈4度〉
 両方の手足に強い症状があり、歩行は自力では不可能であるが、支えてもらえば可能である。日常生活でもかなりの介助を要する。
〈5度〉
 ベッドまたは車椅子の生活で、ほとんど寝たきり。全面的介助を要する。

4. 運動合併症を呈するパーキンソン病に対する治療

(1) エビデンスをもとに日本神経学会のガイドライン作成委員会、パネル委員会において治療アルゴリズムの作成(図2)。

図2 治療アルゴリズム

(*1):ウェアリングオフ出現時には投与量不足の可能性もあるので、L-ドバを1日3~4回投与にしていない、あるいはドバミンアゴニストを十分加えていない場合は、まずこれを行う。
(*2):アポモルヒネに関しては第Ⅰ編第2章8を参照
(*3):DAT:device aided therapy(本邦ではDBS およびL-ドパ持続経腸療法がこれに該当する)。それぞれの治療方法の適応については第Ⅰ編の第1章5と第10章、第Ⅱ編CQ 2-3、第Ⅲ編第4章1~3および下の表を参照。

表2 device aided therapy(DAT)の特徴
- 脳深部刺激療法 L-ドパ持続経腸療法
治療手技 定位脳外科手術 内視鏡を用いた胃瘻造設術
効果の期待できる症状 運動合併症 運動合併症
合併症 脳出血、機器の感染、認知機能への影響、精神症状の発現 胃瘻造設部位の皮膚トラブル、他はL-ドパ製剤と同様の副作用の可能性
その他 定期的なバッテリー交換
磁場発生機器使用に対する制限の可能性
電極、バッテリートラブルなど高齢者に対するリスク
ポンプ携帯および操作の煩雑さ
チューブトラブル(先端の移動、チューブ閉塞、抜去など)
高薬価
① L-ドパ持続経腸療法
 有効性:有効
 L-ドパは半減期が短いことが最大の欠点であり、ウエアリングオフやジスキネジアなどの運動合併症発現の大きな要因となっている。腸管内に持続的にL-ドパを投与する試みは1980年代から行われていたが、2005年にゲル材を用いた臨床試験が報告され、2015年に本邦でも使用可能となった。
② 手術療法
 新しいものもあり、それぞれの効果があるので、個別の有効性を簡便に記載する。
  1. 視床腹中間核破壊術
    有効性:パーキンソン病の振戦の治療に有効
  2. 淡蒼球内節破壊術
    有効性:パーキンソン病の主要運動症状ならびに薬物療法による運動合併症に対して有効である。
  3. 視床下核破壊術
    有効性:パーキンソン病の主要運動症状と薬物療法の運動合併症に対して有効である。
  4. 視床腹中間核刺激療法
    有効性:パーキンソン病の振戦に対し有効である。
  5. 淡蒼球内節刺激療法
    有効性:薬物療法が困難な運動合併症に有効である。
  6. 視床下核刺激療法
    有効性:パーキンソン病主要運動症状ならびに薬物療法の運動合併症に対して有効である。
③ 手術療法の適応基準は何か
 回答:薬物療法で改善不十分な運動症状の日内変動とジスキネジアに対して、視床下核脳深部刺激療法(STN-DBS)もしくは淡蒼球内節脳深部刺激療法(GPi-DBS)を考慮する。薬物療法で改善不十分な振戦に対して、視床腹中間核脳深部刺激療法(Vim-DBS)もしくは視床腹中間核破壊術を考慮する。

(3) リハビリテーション

パーキンソン病のリハビリテーション
 有効性:有効
 リハビリテーションには運動療法、作業療法、言語訓練、嚥下訓練、音楽療法等があり、早期から進行期までどのステージにおいても介入すると有効性が高いと思われる。

4. 非運動症状の治療 主なものを挙げる

(1) 日中過眠

 回答:覚醒障害には、ドパミンアゴニストの減量を試みる

(2) レム睡眠行動障害

 回答:経験的にクロナゼパム(0.5〜2.0mg)の投与が有効と考えられており、考慮してもよい。

(3) 下肢静止不能症候群(むずむず脚症候群)

 回答:特発性のものにはドパミンアゴニスト、ガバペンチンエナカルビルの有効性が証明されているので、パーキンソン病に合併するものにおいてもこれらの薬剤が使用されることがある。

(4) アパシー

 回答:うつの部分症状とし発症したアパシーはうつの治療に準ずる。アパシーにはアゴニストとコリンエステラーゼ阻害薬の有効性が示されている。

(5) 疲労

 回答:運動症状に関連した身体疲労にはドパミン補充療法の有効性が示されている。

(6) 幻覚・妄想

 薬物追加後に発症・増悪した場合は追加薬剤を止める。次いでL-ドパ以外の抗パーキンソン薬を減量・中止する。コリンエステラーゼ阻害薬の有効性が示されている。緊急性がある場合は抗精神病薬であるクエチアピンは抗幻覚・妄想作用が期待され、運動症状を悪化させにくい。

図3 幻覚・妄想の治療アルゴリズム

(*1):抗パーキンソン病薬減量と並行して使用を考慮

(7)認知症が合併した場合の薬物療法

 回答:L-ドパ中心の治療を考慮する。パーキンソン病における認知症に対しては、コリンエステラーゼ阻害薬を考慮する。抗コリン薬の中止を考慮し、NMDA受容体拮抗薬を考慮する。

(8)抗コリン薬はパーキンソン病患者の認知機能を悪化させるか。

 抗コリン薬は記憶障害、遂行機能障害を惹起することがあり、その改善には投薬を漸減・中止する。抗コリン薬は、認知症のある患者および高齢者では使用を控えたほうがよい。

(9)起立性低血圧

 日常生活指導、内服薬の見直しを考慮する。薬物療法として、ドロキシドパ、ミドドリン、フルドロコルチゾンなどによる治療を考慮する。

(10)性機能障害

 回答:男性パーキンソン病患者の性機能障害には、シルデナフィルが有効である可能性が示されている。

(11)痛み

 脳深部刺激療法の痛みに対する有用性は報告されている。侵害受容性疼痛には非ステロイド性鎮痛薬など、神経因性疼痛が原因の場合にはプレガバリンなどを考慮する。脊髄刺激療法が有用であったとする症例報告がある。

5. 将来の治療の可能性

 以下、試みられているが、エビデンスとしては今後の研究、さらなる検討が必要である。

  1. 磁気刺激、修正型電気痙攣療法
  2. 細胞移植
  3. 遺伝子治療

(2020.3.1更新)

文献
1. パーキンソン病治療ガイドライン、日本神経学会、日本精神神経学会、日本老年精神医学会、日本痴呆学会 共同作成、2002
2. パーキンソン病 診療ガイドライン 2018、監修:日本神経学会 編集:「パーキンソン病診療ガイドライン」作成委員会、医学書院、東京 2018
表1 ガイドライン3ページ
図1 ガイドライン107ページ
図2 ガイドライン125ページ
表2 ガイドライン125ページ
図3 ガイドライン248ページ

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